能登地震を巡る原発デマ(4)
電源を喪失した
四つ目は「電源を喪失した」という主張だ。これも違う。部分的な真実で全体の評価をおとしめるようなものだ。事実としては、2号機の主変圧器の故障などで志賀原発への外部電源5回線のうち2回線が使えない状態になったが、残る3回線で安全に運用できるようになっており、問題は起きていない。
さらに全ての電源系統が失われても、非常用ディーゼル発電機がある。これは、東日本大震災のときには津波により水没して使い物にならなくなってしまった。しかし、新規制基準では、先ほど述べた防潮堤などの防護施設により、敷地に津波が流入することを防ぎ、さらに万が一流入した場合に備え、建物を水密化するなどの対策を施した。
そして、非常用ディーゼル発電機が壊れてしまったとしても、高台に配備されている大容量電源車や高圧電源車によってカバーすることになっている。この点などは、福島の事故の教訓が生かされている。
能登地震を巡る原発デマ(5)
原発内で火災があり、それを隠している
最後は、鳩山由紀夫元首相も発言していた「原発内で火災が起きた」という話と、「それを隠している」というものだ。実際には火事は起きておらず、「漏れた油のにおいと、放圧板の扉が開いたときにバーンと音がして、それらが火事と勘違いされた」(電力関係者)のだという。
問題を複雑にしているのが、火災の可能性があると判断した志賀原発の当直長が「火災発生」と消防へ119番通報していたことや、「火災が起きたが消火済み」と林芳正官房長官が当初、火災の発生を認めてしまったことだ。後に「火災は発生していない」と北陸電力が撤回したものの、この「火事が起きたことを官房長官も認めた」という事実だけが一人歩きしてしまっている。
鳩山元首相を含め、原発については「事実をよく確認せず、適当に不安をあおったままほったらかす」ということが許されてしまっているようだ。鳩山元首相に至っては、北陸電力の訂正後に「火災が起きた」とX(旧Twitter)に投稿。長男である国民民主党の鳩山紀一郎氏から撤回を求められるも「火災がないに越したことはないが、作業員が何を火災と間違えたのか。では火もないのに消火済みとは?怪しさは消えず」という投稿を重ねたことで批判が集まっている。