能登地震を巡る原発デマ(3)
原発の耐震性は普通の家より低い
三つ目は、経済産業省の元官僚であった古賀茂明氏が主張していることだ。古賀氏によると原発の耐震性が、一般のハウスメーカーの耐震性と比較して低い基準になっているという。
志賀原発の耐震性は、設計上は600ガルに耐えられるように建築されており、今回の地震では399ガルを観測した。新規制基準では志賀原発は1000ガルに耐えられる設計にしており、現在、国が審査中だ。
「ガル」とは、地震の強さを測る単位の一つだ。地震の加速度を表すために使われる。具体的には、1ガルは1秒間に1cmの速さで地面が動くことを意味する。そして、ハウスメーカーの中には、三井ホームのように耐震実験で5000ガル以上の加速度に耐えた実績があるとアピールしているところもある。
しかし、これは同じ単位だからといって比較すべきものではない。古賀氏はそれを分かっていながら主張するのだからタチが悪いと思うが、分かりやすく伝えるために、まず「地面」の話をしよう。
地面は、簡単に言うと固い岩盤の上に表層地盤が乗っている。私たちが生活しているのは揺れやすく動きやすい表層地盤だ。そして、日本にある原発は全て「岩盤」に直接建設されている。岩盤に建てることで地震が来ても揺れをかなり小さくすることができる。立地が決まると地下の強固な岩盤まで掘り進めていく。
岩盤と表層地盤の「ガル」を比較することに意味は全くない。例えば、熊本地震(2016年)では、表層地盤(地盤地表)では「1580ガル」が観測されたが、地下にあった岩盤では「237ガル」だった。表層地盤の方が揺れるのだから、それに応じた耐震性が求められるというだけの話である。同じ土俵に並べる意味がないことが分かっていただけただろうか。
他にも、地盤の揺れと設備の揺れを混同している人も見受けられた。地盤の揺れより設備の揺れの方が大きい「ガル」になり、今回、設備の揺れとして計測されたガル数(志賀1号:957ガル、志賀2号871ガル)を、志賀原発が設計上想定した地盤の揺れのガル数(600ガル)に当てはめても無意味だ。