サービス変更から一転し
譲歩姿勢を示した理由
これまで行われたさまざまなサービス変更(場合によっては改悪)でも利用者から不満や戸惑いの声が上がることはあったが、JR東日本は「理解を求める」という姿勢を崩さなかった。ところが今回の沿線自治体・利用者からの反発は想像以上だったのか、一転して譲歩を示したのだった。
JR東日本のコーポレート・コミュニケーション部門(広報)は「ダイヤ改正は多岐にわたる関係者との調整や多くの綿密な作業であるため、本来であれば短期間で変更することは不可能」としながら、「自治体やご利用のお客さまから多くのご要望があったこと、弊社としても影響に思いが至らぬ点があったことなど、限られた時間の中で何か工夫をできないか検討した結果」、早朝時間帯であれば調整が可能だったため、限定的ながら一部ダイヤを見直すことになったと説明する。
筆者が「考えが至らなかった」とは何を指すのかと問うと、「線区全体の利便性向上を考慮してダイヤ改正を行っている」と前置きした上で、通勤快速・快速の各駅停車化は「快速停車駅の速達性とトレードオフの関係であり、総合的に判断する上でこの課題は認識していましたが、線区全体の価値向上について、我々の考えと皆さまのお考えが一致しなかったということがあり、その点の考えが至らなかった部分と考えています」と回答した。
ただ、「復活」する快速は蘇我駅6時台発の2本で、現行の通勤快速より1時間早い7時25分、7時35分に到着するため、生活リズム自体を変えなければ利用できない。沿線自治体も「見直しは不十分」「納得できない」として、あくまでも通勤快速の復活を目指している。
通勤快速の復活が困難な理由について同社は、「通勤の最ピーク時間帯は列車ダイヤが一番密になっているほか、車両も社員も最大限動かしている時間帯であり、検討した結果、影響があまりにも広くなりすぎるため、限られた時間での対応は困難」と説明した。
一方で「ご利用状況などを踏まえたうえで、さまざまな観点から、京葉線の魅力・利便性向上に向け、柔軟に検討してまいりたい」として今後、改めてダイヤを見直す可能性は否定しなかった。
段階的に進めてきた
「快速縮小」の集大成
では、なぜJR東日本は「影響に思いが至らぬ」ダイヤ改正を行おうとしたのか。言うまでもないが、何も嫌がらせのために快速を廃止したのではなく、同社には同社の都合、考えがあって立案した新ダイヤである。
同社はダイヤ改正の目的と狙いについて「列車ごとの混雑の平準化」「快速等通過駅における乗車機会の確保」「各駅停車の所要時間短縮」にあったと説明する。その中で快速・通勤快速を廃止する理由は、前後の各駅停車と比較して混雑する朝ラッシュピーク前の快速2本と、前後より利用が少ないピーク時間の通勤快速2本の混雑の平準化にあるという。
沿線にテーマパークやイベント施設を抱える京葉線では、朝ラッシュに限らず快速列車に利用が集中する傾向が強く、混雑のみならず遅延が生じがちだった。今回のダイヤ改正は朝ラッシュの快速運転廃止ばかり注目が集まったが、日中の快速運行時間帯も午前10時~午後3時台まで大幅に縮小されている。