平準化が必要なほどの
混雑は生じていたのか
では、各駅停車の増発で対処できなかったのか。大前提としてコロナ禍で減少した定期利用は、テレワークの定着もあり、回復の兆しはない。次の表で示すようにJR東日本関東エリアの定期輸送量は、コロナ前の2018年度に約712億人キロだったのが、2020年度は約74%の水準の約529億人キロまで減少し、その後も横ばいだ。
一方、国土交通省の混雑率調査に着目すると、定期利用の減少以上に朝ラッシュのピークシフトが進んでいることがうかがえる。京葉線のピーク1時間の輸送量は2019年(10~11月に実施)の約5.3万人から2022年度には約3万人まで、約57%に減少している。
そのため、2022年のダイヤ改正でピーク1時間の運行本数が24本から21本に削減されたにもかかわらず、混雑率は102%とかなりゆとりがある(もちろんこれは平均値であり列車、車両によって混雑の度合いは異なる)。そのため今回のダイヤ改正でさらに1本減便され20本となる。
鉄道は、運行本数が最も多い朝ラッシュに合わせて車両や人員を用意する必要があるが、これらの多くは日中使用しないため、経営的には非常に効率が悪い。実際に利用者が大きく減少し、かつ鉄道の収益性が低下する中、輸送の効率化を進めること自体はやむを得ない。
しかし利用者が半分になったからといって、運行本数まで半分にしたら、混雑率は元通りだ。もちろんこれは極論だとしても、コロナ禍の結果によって生じた「ゆとり」の利益を、鉄道事業者と利用者が平等に分け合うのではなく、事業者の都合(利益)だけが優先されるとなれば不満が出るのは当然だ。
利用者にとっての利益のひとつは、コロナ禍以降、特に重視されるようになった混雑の緩和だが、少なくとも統計上の平均値では混雑率は劇的に改善している。混雑緩和だけが目的であれば、利用が多い快速はともかく、利用が少ない通勤快速まで廃止する必要はない。
ではどのような場面で混雑が問題化しているのか。この疑問をJR東日本にぶつけると、次のような回答を得た。
「京葉線では朝ラッシュ時はコロナの影響により京葉線の全体としては大きく減少しています。特に京葉線(蘇我方面から東京方面)の列車については武蔵野線と比較してもコロナ後の戻りが悪くなっており、お客さまのご利用が多く列車運行本数が多い市川塩浜以西においては編成両数や停車駅が異なるため、列車ごとの混雑の偏りが発生しています。
特に8両編成の武蔵野線直通列車も運行していることや、京葉線内を新木場まで停車しない通勤快速を含め、列車種別ごとの混雑に偏りがあると認識しています。また通勤快速が運行している時間帯の蘇我~海浜幕張間などでも各駅停車は混雑が発生している状況です」