米ヘッジファンド所属の現役オプショントレーダーが、「オプションとは」に始まる基礎理論から、プロトレーダーの視点、そしてVIX先物までを解説する『実務家のためのオプション取引入門』。この連載では本書に収められている14のコラムから5つを紹介する。最終回の今日は、「配当スプレッドとメリルリンチの失敗」だ。
マーケットメイカーに許された特権
12章ではコールスプレッドの形で配当スプレッドを説明しましたが、実は取引所のマーケットメイカーであればコールスプレッドを執行する必要はありません。
OCCはマーケットメイカーにのみ、取引日中にひとつのオプションに対してロングポジションとショートポジションをとることを許可しています。
例えば、配当落ちの前日に100個コールを買い、同じコールを100個売れば、正味のポジションはゼロです。したがって通常であれば行使もできませんし、割り当てられることもありません。
ところがマーケットメイカーであれば、取引終了後に買った100個を行使して株に換え、そして100個のコールのショートポジションを取るということが可能なのです。
マーケットメイカーは、これを利用して配当落ちの前日にマーケットメイカー同士で大量のコールの売買を執行して、オープンインタレストの大部分を独占することができます。
こうして、買った分を行使して株に換え、うまくいけば売った分のいくつかが割り当てられずに残り、配当をかすめ取ることができるというわけです。