配当スプレッド狙いに潜むリスク

 いったいどのような「operational error」が起きたのかは知るところではありませんが、このようなミス、見落としはトレーダー側にも十分起こりうることです。
 私も、配当スプレッドではないのですが、配当落ちの前日に行使すべきインザマネーのコールを、一部行使し忘れるという失敗をおかしたことがあります。
 そして、こうしたわずかなミスが大きな損失につながることもあるのです。

 また先ほど配当スプレッドのデルタはヘッジされていると言いましたが、それはショートしたコールがディープインザマネーにとどまっている範囲でのみの話です。
 翌日に株価が何十%も下落すれば、ショートしたコールのデルタは1ではなくなり、オプショナリティを持った立派な「オプション」となります。
 そうなればもはやデルタはヘッジされていませんし、あらゆるリスクが出現することになります。

 信用危機のまっただ中にあった2008年には、配当スプレッドの執行数量は減少したと言われています。
 高ボラティリティの状況下では、配当スプレッドもリスキーな取引になりうるのです。


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目次

1章  オプションとは
2章  プットコールパリティ
3章  オプション価格はどう決まるか
4章  オプション価格計算モデル
5章  ボラティリティとは
6章  ボラティリティサーフィス
7章  スプレッドとは
8章  グリーク
9章  グリークの視点からのスプレッド
10章  コールとプットの等価性
11章  オプションアービトラージ
12章  アメリカン型オプションの早期行使
13章  トレーダーの視点
14章  VIXとは
用語集
正規分布表
索引