南北線車両札幌市営地下鉄南北線車両 Photo by Wataya Miyatake

2月4日~11日開催の「さっぽろ雪まつり」の他にも、札幌にはオンリーワンがある。札幌市営地下鉄だ。仕様として珍しいものが多いことから、車両や設備をしげしげと眺めに来る鉄道ファンも少なくない。その建設に関して資料や報道をひもとくと、恐るべき事実が判明した。実は、建設当時の現場責任者が“見切り発車”で造ってしまったのだ。(乗り物ライター 宮武和多哉)

札幌のオンリーワンといえば「雪まつり」
他に「シェルターを走る地下鉄」も

 北海道札幌市の中心部に、約200基の雪像・氷像が設置される「さっぽろ雪まつり」が、2024年は2月11日まで開催される。

 今回で74回目を迎えるさっぽろ雪まつりは、カナダ・ケベック、中国・ハルビンと並び、「世界3大雪まつり」の一角と称される。会場となる大通公園やすすきの周辺は、期間中は200万人近い人で賑わう。他の街では楽しめない「札幌のオンリーワン」ともいえるイベントだ。

さっぽろ雪まつりの雪像さっぽろ雪まつりの雪像 Photo by W.M.

 あまり知られていないが実はもう一つ、札幌にはオンリーワンがある。札幌市営地下鉄だ。普通の鉄道がレールの上を鉄輪で走るのに対して、こちらは「案内軌条」と呼ばれるガイドレールに沿って、ゴムタイヤで走行する。ゴムタイヤ方式の地下鉄は、フランスやブラジルなどで採用されているものの、中央部に案内軌条がある方式は、世界でも珍しい。

 また、「高架上の雪避けシェルター」は、ここまで長大なものは世界でも札幌市にしかない。札幌市営地下鉄で最初に開通した南北線の終端部となる約5km(平岸駅~真駒内駅間)では、高さ7m弱の高架上部をすっぽり覆うシェルターの中を走行する。雪などによる影響を受けず、近隣に響く騒音も抑える効果がある。

 このように、札幌の地下鉄は仕様として珍しいものが多いことから、車両や設備をしげしげと眺めに来る鉄道ファンも少なくない。

 札幌市は、工事費用も維持費もかかる巨大なシェルターを、なぜ設置できたのか。資料や報道をひもとくと、恐るべき事実が判明した。実はこのシェルター、建設当時の現場責任者が、最高責任者(当時の札幌市長)の反対を押し切り、“見切り発車”で作ってしまったのだという。建設当時の事情を振り返ってみよう。