局長の号泣に見送られた一番電車
シェルターは老朽化問題も
こうして1971年12月16日、札幌市営地下鉄南北線が、北24条駅~さっぽろ駅~真駒内駅間で開業を果たした。五輪開会式の50日前だった。記念すべき一番電車の歓迎式典では、原田市長からバトンを受け継いだ板垣武四・札幌市長が出席した。ことの張本人、大刀局長は、人目をはばからず号泣しながら電車を見送る姿が目撃されている。
自分が信じたプロジェクトを、権力者との激しいやり取りをもいとわず、成功に導く。大刀局長の仕事ぶりは、令和どころか、平成でもできなかっただろう。「交通局は大刀一家」と言われるほど部下からの信望も厚く、98年に83歳で死去した際は、多くの関係者が別れを惜しんだという。
南北線がこの地域で果たした役割は大きく、開業から半世紀あまりが経過した今、沿線はすっかり宅地化された。シェルターのおかげで安定して運行できるため、23年冬に札幌を豪雪が襲った際にも、ほぼ通常運行を続けていた。
ただ、近年は、老朽化によるシェルターの補修費用が問題になっている。天井部に積もった雪が歩行者に落ちることを防ぐため、職員が夜中に手作業で雪落としを行うなど、維持の手間も並大抵ではない。また、ゴムタイヤ方式であるがゆえに、レールを走るJR路線との乗り入れを検討できないなど、決して良いことばかりではない。
さっぽろ雪まつりの観光ついでに、地下鉄とともに発展した札幌の街とシェルターを一望してみてはいかがだろうか。南北線・南平岸駅から200mほど東側にある平岸高台公園(旧・HTB北海道テレビ本社の北側)からの眺めが絶景でおすすめだ。