今日はバレンタインデー。どのチョコレートを選ぶべきか目移りしてしまうが、ゴディバ発祥の地・ベルギーはチョコ大国であり、ほかにも有名ブランドがひしめいている。彼らの歴史や商品の成り立ちなども知っておけば、チョコ選びが何倍も楽しくなること間違いなしだ。本稿は、増田ユリヤ『チョコレートで読み解く世界史』(ポプラ社)の一部を抜粋・編集したものです。
薬局から王室御用達ブランドへ
老舗チョコレート店「ノイハウス」
もう20年も前の話になりますが、私が初めてベルギーのブリュッセルを訪れたときに最も印象に残ったのが、美しいアーケード街のギャルリ・ロワイヤル・サンテュベールです。
ここは、19世紀半ばに造られたヨーロッパで最も古いアーケードで、全長約200メートルの両側にカフェやチョコレートショップ、ベルギーレースをはじめ伝統工芸品を扱うお店などが立ち並んでいます。その中に、薬局から始まったという王室御用達ブランドの店、ノイハウスがあります。
ノイハウスの創業は、1857年。現在の場所で開業しました。創業者は、ジャン・ノイハウス。もともとの姓は、イタリア語でカサ(家)・ノヴァ(新しい)といいましたが、スイスで医学を学ぶことになったので、現地語であるドイツ語に変更したそうです。ノイが新しい、ハウスが家ですね。学業を終えたジャンはブリュッセルに移り、この地に薬局をオープンしました。そして、店の地下で薬をチョコレートでコーティングして販売していたそうです。
ある日ジャンの孫が彼に言いました。
「おじいさんはなぜ、まずい薬にチョコレートをかけるの?ぼくが美味しいものをチョコレートでコーティングしよう」と。
この孫が、3代目にあたるジャン・ノイハウス・ジュニア。彼は言葉どおりに、ペースト状のナッツに砂糖を混ぜたクリームをチョコレートで包んだ「プラリネ」を生み出しました。さらに、一口サイズのチョコレート「ボンボンショコラ」も考案しました。
こうして美味しいチョコレートを開発したノイハウスは、チョコレートを贈る習慣も広めたといいます。クッキーやケーキなどの焼き菓子などと違い、美味しいチョコレートを自分で作ることは、まず不可能で(自宅で作るという場合、単にチョコレートを溶かして型に入れたり、トッピングをしたりするだけのことになるので)チョコレートはプレゼントをしたり、買ってきたりして食べるものだということですね。