銀座、新宿、秋葉原――。2010年代中盤以降、都内の買い物スポットは、春節の到来とともに活気にあふれた。観光バスが止まる先々で、中国人観光客がキャリーケースを引きずりながら楽しむ“爆買い”は、見る者を驚愕させた。だが今、こうした光景はなくなってしまった。中国で一体何が起こっているのだろうか。(「China Report」著者 ジャーナリスト 姫田小夏)
ほとんど目にすることがなくなった大型観光バス
新宿・歌舞伎町から激減したもの――それは発着を繰り返す大型観光バスだ。新型コロナウイルス感染症が拡大する直前まで、靖国通りは中国人観光客を乗せた観光バスで大渋滞が発生することもしばしばだった。
銀座も同じだ。銀座8丁目の「肉のハナマサ」前は、中国人観光客のための暗黙の“観光バス発着所”だった。しかし、今やそこには、大型観光バスの車列も、買い物袋を抱えた中国人観光客もない。春節休みの1日目、筆者が辛うじて目にしたのはマイクロバスや乗用車の小型車だった。当時は、キャリーケースを転がしながら買い物を楽しむ中国人観光客もよく見られた。彼らの旺盛な購買力で、店によっては行列ができ、商品によっては欠品が相次いだが、当時ほどの人出はない。
日本各地の主要都市や「ゴールデンルート」上で爆買い現象が起こったのは2015年前後からだった。中国からの訪日旅行客も団体客が多く、こうした人々は観光バスの行く先々で、旺盛な消費行動を見せた。観光バスの中でさえ、中国人観光客は中国人ガイドが売りさばく大量のお土産品に群がった。
こうした中国の団体客は、コロナ禍に姿を消したが、昨年8月に中国からの団体旅行が解禁されたことで、日本に戻ってくるはず…だった。しかし、今年の春節連休(2月10日~17日)の都心では、大挙して繰り出す中国人団体客を目にすることはほとんどない。
中国人団体客が消えたのは、中国国内の大不況――不動産市場の低迷、株価の下落、常態化する失業、給与の遅配あるいは減給――が主因だが、理由はそれだけではなかった。