海外旅行もタブー視?日本は「行きづらい」国になっている
中国政府は「(1月26日から)40日間の春節期間に、帰省や旅行で延べ90億人が移動する」との予測を公表した。集計方法を変えての試算であるため、過去との比較がしにくいが、中国旅行研究院からは、海外渡航者について「前年比49%増の1億3000万人」という予想が公表されている。コロナ禍前の2019年は年間1億5500万人(中国文化旅行部)が海外旅行を楽しんでおり、それに近い数字だ。
しかし、実際のところ、中国には海外旅行に行きにくい雰囲気がある。習近平政権は内需拡大を喫緊の課題に据えており、ましてや処理水問題は解決していないという立場を取る中国で、日本への旅行ははばかられるという空気さえあるのだ。
都内の大学で教壇に立つ中国人女性は「中国では国内旅行がいいとされ、海外旅行なら、習氏が『ビザなし渡航』に力を入れてきた一帯一路の沿線国がいいとされています。こうした中で、日本を渡航先として選びにくい。やむを得ず『こっそりと』と訪日する人もいます」と話す。
確かに海外旅行への「行きづらさ」はあるようだ。
筆者が昨年末に訪れたローマのコロッセオでも、中国人観光客や彼らを乗せる観光バスはほとんど見かけなかった。コロッセオのゲートには、中国人団体客向けの専用カウンターさえあったが、訪れる者はなく閑散としていた。ちなみにイタリアは昨年12月初旬に「一帯一路」から離脱している。
習政権は、「一帯一路」の150を超える沿線諸国を、中国からのインフラ投資だけではなく、中国人観光客の受け皿として発展させる意向だ。さらに、「一帯一路」の沿線国を中心に、普通旅券を所持する中国国民のビザなし渡航を拡大させる方針で、今年はシンガポール(2月から)やタイ(3月から)で相互にビザなし渡航が実現する。
中国は、2024年1月31日時点で156カ国と「相互ビザ免除協定」(現状は主に外交、公務が中心)を結んでいるが、そのリストの中には日本はない。こうしたことも日本を「行きづらい国」にしている可能性がある。