このような社会的背景から、週刊誌をはじめさまざまなメディアで終活が取り上げられています。大型書店に行けば、必ずと言っていいほど終活コーナーがあります。自治体においても、終活にまつわる窓口が設置されるようになってきています。

 かくいう司法書士である筆者のもとにも、終活に関する相談をされる依頼者が増えています。特に筆者が執務を行う北九州市は、政令指定都市の中でも最も高齢化が進んでいる都市といわれています。かつて製鉄で栄えた北九州市も、65歳以上の人口が3割を超えています。相談は増える一方だと実感している次第です。

 その中で近年、特に目立ってきたのが、「おひとりさま」からの相談です。

「おひとりさま」が増えている背景

 自分が入院した時に頼れる人がいない、認知症になった時に誰が動いてくれるのか、葬儀の希望があるがどこに頼めばいいのか、相続人がいないので自分の財産はどうしたらいいのか……などなど、皆さんさまざまな悩みを抱えて来られます。これからはおひとりさま1人ひとりのお悩みに、しっかりと対応できる執務姿勢が求められていると感じています。

 おひとりさまが増えている背景については、いろいろな要因が挙げられます。少子高齢化に加え、生涯未婚率の上昇、離婚者数の増加、核家族化の影響などです。

 理由はどうであれ、確実におひとりさまと呼ばれる方は増えているのです。終活をさらに分けるとすれば、「ひとり終活」というカテゴリーが確立されていると言っても過言ではないでしょう。

 これは各種の統計を見ても明らかです。例えば、2022版厚生労働省白書によると、50歳時点で一度も結婚をしたことがない人の割合は、1985年では男女とも5%未満でした。それから35年後の2020年には、男性28.3%、女性17.8%となっています。

 もちろん、未婚の方だけではありません。夫婦であっても必ずいつかは1人になります。子どもがいない夫婦であれば、実は「おひとりさま予備軍」と位置付けられるのです。

 もう1つ付け加えるとすれば、「親の面倒は長男が見る」といったような家族主義の風潮が薄れてきていることです。親族間のあり方も、昔の日本に比べると希薄になっている現状があります。これは、これまで家族や親族が人生の最後をサポートしてきたけれども、実際のところ「家族」に頼めない人が増えていることを意味します。

 今まさに、おひとりさま1人ひとりが積極的に「ひとり終活」をしないといけない時代に突入しているのです。