大切なのは原点を見つけること

 先日ストーリーテリングについての授業があり、講師からこんなことを学びました。人の心に響くストーリーを語る秘訣は、周りが期待する要素を足して元々の話を見た目よく美しく作り上げないこと。肩書きや外見、職歴や学歴、出身地などを気にしていると、本質的なポイントに到達できず人の心を動かすことはできません。

 この授業では、自分の人生について一人4分間で話す課題が与えられました。今回は、デンマークに来るきっかけとなった東日本大震災の話をしました。震災で見たもの、感じた事を正直に話しました。

 ところが2011年3月11日の自分に戻って話をしている内に、途中で涙がとまらなくなりました。こんな体験は初めてです。たったの4分間でしたが、疲れ果ててしまいました。話を聞いていたチームメイトたちは「私も泣きそうになった」「話してくれてありがとう」と言ってくれました。

 人間の原点には、大きなエネルギーがあります。日々忙しく過ごす中で、周りの期待や理想にとらわれて、どこかに原点が隠れている場合が多いかと思います。ただ何度も自分に問いを繰り返すこと、好奇心が強いかつ良い質問をしてくれる他人に話すことによって、アイデンティティーである原点に気づくことができます。

 自分の見ている世界は自分だけしか見えないものであり、他人が見ているものと異なります。直感や感動はその人にしかない感覚で、その体験を正直に言葉や形で表現することにより、個性に気づくのです。最終的にそれが他人の心を動かすクリエイティブな表現の上達につながるのです。