クリエイティビティを保つコツ

 教育にフォーカスして考えてみました。北欧諸国の中でもフィンランドの教育は、OECDが実施するPISAのような国際学力調査の結果や、教員が修士号を持つことから、その質の高さで明らかです。以前からフィンランドの教育が気になっていたのですが、特に縁はありませんでした。

 ある日、facebookで「フィンランドでクリエイティビティを育てる教育に関わっている人を紹介してほしい」と書くと、すぐに友人がフィンランド人の友人を紹介してくれました。彼がリサーチ内容を伝えると親切に何名か紹介してくれたので、イースターの休暇を利用して、彼らに会いにフィンランドを訪れることにしました。

 まず友人が薦めてくれたのはアールト大学の芸術・デザイン学部の教授のマルクさんです。アールト大学の芸術・デザイン学部はそれぞれの分野では北欧で最大級、世界的にも有名な大学です。インタビューに快諾してくださったマルクさんはアーティストであり、アールト大学での12年間を含め、40年間世界中でアートを教えてこられたベテランです。

 どうすればクリエイティビティや、本当に好きなことを続けるモチベーションを維持できるのですか?と聞くと彼はこう言いました。

人生を自分でコントロールする<br />北欧の原点教育とは?マルクさん

「モチベーションの主な原点は『対話』です。学生の学ぶ内容によりますが、私は月に2回、2時間は直接彼らと会って話をする場を設けています。人生の概観に対するより幅広い視点を持てるように、彼等が取り組んでいる内容、倫理観、背景、将来に対する考え方について質問します。

 重要なのは、世界に対して持つ意見というのは、それを観察する人の視点によるものであることを学生が理解することです。世界は網の目のように様々な出来事が調和されてできています。観察する人の中や世界で起きるとても小さな動きが、新しい視点をもたらすのです。

 その意味で、私は生徒をワークスペースでいろんなところに連れて行きます。例えば、都市下水路、教会の塔、灯台など、完全に静かで野性的な場所です。そこで彼らがオープンマインドになり可能性を理解する瞬間と機会を作るのです。モチベーションとは、常に自分が持っている可能性を理解することと深く関係しています。そのために自分に正直にならなくてはいけません。生徒たちが可能性を信じたときに彼らが変わる姿を見るのは素晴らしいものです」