「アフターコロナ」の
輸送体制の整備が課題

 もちろん10%の減少であっても経営には大打撃であり、元に戻ったとは言い難い。しかしコロナ禍から4年で定期が8~9割、定期外はほぼ回復したというのは、予想を上回る数字なのではないだろうか。

 そうなると問題になるのは、「アフターコロナ」の輸送体制である。普段は自宅で仕事をしている筆者だが、たまに取材や出張のため通勤時間帯の電車に乗ると、車内がだんだんと混雑していることに気づく。朝だけでない。日中も体が触れ合う電車もあるほどで、利用者の誰もが電車が混むようになってきた、と感じていることだろう。

 前述のように、鉄道各社はコロナ後、都市近郊で1~2割、地域によっては5割もの減便を実施した。一方、利用者は定期・定期外あわせて1割前後の減少。これでは利用者の減少以上に減便していることになる。

 利用回復に伴い今回のダイヤ改正では、西武新宿線は日中時間帯に急行と各駅停車を1時間当たり各1本ずつ増発し、2022年3月のダイヤ改正以前の本数に戻した。ダイヤ改正は1~2年の準備期間が必要であり、予想外の利用回復に対応するとしても、形になるのは来年以降になる。

 ではどの路線もコロナ前に戻せばよいかというと、そう単純な話ではない。本稿で示した利用者数は各社それぞれ合計の数字であり、利用状況・混雑状況は路線によって異なるので、平均値と個別の数字を比較する意味はない。

 また、利用形態の変化もデータの解釈を難しくさせている。定期券は日々の通勤・通学利用のために購入し、朝ラッシュ時間帯を中心に毎日利用する乗車券との位置づけであり、人々の動きを追う時も、定期利用イコール朝ラッシュ利用とみなして問題なかった。

 ところがリモートワーク・時差通勤が普及すると、通勤定期を購入していながら朝ラッシュ時間帯には乗らない人や、ラッシュ時間帯に利用するが出勤回数が少なく定期券では元が取れないので普通運賃(定期外)で利用する人など、従来の想定から外れた利用形態が増えていく。

国交省による混雑率調査
2023年度の結果はどうなるか

 それを示すのは、国土交通省が毎年行っている混雑率調査だ。コロナ前(2019年秋)の調査と最新の2022年秋の調査を比較すると、輸送力(朝ラッシュピーク1時間当たりの運行本数×定員)は常磐快速線が21%、山手線外回りが18%、東海道線が11%減少している。

 JR東日本の2022年度第3四半期(10~12月)関東圏定期輸送量(乗客一人が利用した距離「人キロ」の総和)は2019年度同期比(以下同)23%減だが、混雑率調査の朝ラッシュピーク利用者数は常磐快速線が32%、山手線外回りが37%、東海道線が38%も減少している。

 JR東日本の調査対象22線区を合算しても利用者数は32%減、大手私鉄も多くの路線で全体の定期利用者減少率を上回る減少となっており、特定の事業者・路線に限った傾向ではなさそうだ。

 定期券の利用者数は有効期間中に案分して計上するため、統計上の「定期利用者」が必ずしも実際に乗車しているわけではない。一方、混雑率調査は、自動改札の通過データや車両の空気ばねにかかる荷重から推定した乗客数など、異なるデータを用いるため、両者にはズレがある。

 JRは国鉄時代の名残で大手私鉄より定期券の割引率が高く、6カ月通勤定期は月13日程度の利用で元が取れる。コロナ禍で出勤が減少しても管理上、定期券の支給を続けていた企業も多かったのかもしれない。定期利用が戻り始めた2023年度の調査結果がどうなるか、気になるところだ。