事業者と利用者が
利益を分かち合う必要

 話がそれた。定期外を見てもJR東日本の2022年度第3四半期輸送量はコロナ前の10%減、2023年度同期は1%増になったが、同社の看板路線である山手線の輸送力は平日日中で3割減、今回のダイヤ改正では新たに外回りの土休日日中も減便した。

 利用が戻ったにもかかわらず経費削減を継続し、乗客に不便を強いていると見られても仕方ないが、JR東日本によれば山手線の利用者数はいまだにコロナ前の6割程度しか回復しておらず、減便以上に利用者が減少しているのが実情という。

 路線単位・時間単位の利用実態は事業者でも容易に把握はできず、外部からはなおさらだ。月次情報あるいは決算情報で開示される全体の利用状況、収入と前出の国交省混雑率調査を除けば、2年ほど遅れて公表される国交省の鉄道統計年報くらいしか詳細なデータがない。鉄道統計年報にしてもJRの路線別データは開示されない。

 事業者と利用者の間に圧倒的な情報格差がある中、「利用は減ったままだから増発はしない(あるいはさらに減便する)」という事業者の主張に、外部からあらがうすべはない。しかし、仮に事業者の判断が妥当だったとしても、利用者や社会との対話を軽視すれば、信頼関係が生まれるはずがない。今回のダイヤ改正の「京葉線問題」はその一例だ。

 運行形態の変更、切符のデジタル化、有人窓口の削減など、鉄道事業者はコロナ禍への対応のみならず、将来の人口減少社会に備えた抜本的な構造改革が必要だと考えている。だが鉄道は事業者だけでは成立しない。地域、利用者と共に作りあげるものだ。信頼関係なくして、どうやって新しい鉄道像を描こうというのか。

 コロナ禍以降加速したローカル線存続問題で、事業者は各路線の利用状況や収支を公開し、議論の必要性を訴えた。同様に都市部の鉄道についても輸送の実態と将来の見通しを踏まえ、どのような輸送サービスを提供していきたいのか、利用者と社会にしっかり示す責務があるのではないか。

 冒頭に記した通り、鉄道事業者にとって朝ラッシュの混雑緩和は長年の宿題だった。ただ混雑率200%の路線の利用者が半減したからといって、運行本数まで半減しては意味がない。輸送量は半分に、輸送力は3分の2になれば混雑率は150%になる。事業者と利用者それぞれに取り分があるのが自然だろう。

 またコロナ以前のダイヤは、さまざまな事情、利害、妥協を継ぎ足して作り上げたもので、必ずしも利用者にとって便利なものではなかった面があるのも事実だ。

 例えば西武鉄道は、2022年3月のダイヤ改正で日中の有楽町線直通列車を毎時6本から4本に減便したが、副都心線直通列車と本数を合わせ、不均等だった運転間隔もおおむね15分間隔にしたことで、かえって利便性が向上した。

 知恵と工夫があれば、減便すらポジティブなものに変えられる。事業者は固定費の削減、利用者は混雑緩和と利便性向上、どちらかだけではなく、利益は分かち合わなければならない。

訂正 記事初出時より以下のように訂正します。
11段落目:今回のダイヤ改正ではさらに土休日の外回りも12分間隔となった。→今回のダイヤ改正ではさらに土休日の外回りも12本(5分間隔)となった。
(2024年3月18日14:02 ダイヤモンド編集部)