新型コロナの重症化など
肥満が万病のもととなるワケ

 ところで、米国など欧米ではBMI30以上が肥満となっている。日本と欧米で基準が異なるのはなぜなのだろうか。

「それは、日本人や中国人などの東アジア人は、BMI25くらいの小太りでも、2型糖尿病などの病気になりやすいからです。例えば、血糖値を下げるインスリンの効きが悪くなって2型糖尿病になるのは欧米人の場合は平均BMI30くらいですが、日本人や中国人ではBMI25前後で同じような状態になる人が多いことが分かっています。そのため、日本ではBMI25以上を肥満と定義しています」

 一方、BMIが25未満でも、おなかがポッコリ出て腹囲が男性で85㎝以上、女性で90㎝以上になると内臓脂肪型肥満だ。この状態で、(1)血圧が130/85㎜Hg以上(2)空腹時血糖値110㎎/dL以上(3)中性脂肪150㎎/dL以上かつ(または)HDLコレステロール40㎎/dL未満――この3つのどれかに当てはまれば、「メタボリックシンドローム」と診断される。

 腹囲の基準に性差があるのは、女性は皮下脂肪がたまりやすいのに対し、男性は内臓脂肪が蓄積しやすいからだ。

「肥満が危険なのは、蓄積した内臓脂肪から脂肪酸やTNFアルファ、パイ・ワンなどという悪玉物質が大量に分泌されるようになって、糖尿病になりやすく動脈硬化が進行するからです。脂肪は、動脈硬化を防ぐアディポネクチンなどの善玉物質も分泌していますが、内臓脂肪が蓄積すると悪玉が増えて善玉が減りアンバランスが生じます。そして、その悪玉を退治するために、いわば警察官や消防隊の役目をしている白血球が集まってきて炎症が起こり、さまざまな病気を引き起こすのです」

 新型コロナなどの感染症で肥満の人が重症化しやすいのも、もともと体の中で炎症が起こっているために、ウイルス感染によって火に油を注いだように免疫が暴走してしまうからだ。糖尿病などの疾患のある人は、免疫機能が低下していて感染症にもかかりやすい。