「内蔵型脂肪型肥満」の人は
放っておくと肥満症になるリスク

 まだ健康障害は生じていないが、へその高さで測る腹囲が男性で85㎝以上、女性で90㎝以上の内臓脂肪型肥満の人に対する内服薬のオルリスタットも、2023年2月に新たに承認された。医師の処方薬ではなく、内臓脂肪減少薬「アライ」という商品名で、大正製薬が今年の4月8日から、薬剤師のいる全国の薬局・薬店で販売を開始する市販薬だ。

 購入時には薬剤師による対面での説明が必要で、腹囲が男性85㎝以上・女性90㎝以上、肥満症の診断基準にある健康障害を合併しておらず、初回購入前に3カ月以上食事や運動など生活習慣改善の取り組みをしており、初回購入前1カ月と使用中は生活習慣の取り組み、体重・腹囲を記録することが条件になっている。

 オルリスタットは、脂肪分解酵素であるリパーゼの働きを阻害することで、食べた脂肪の約25%を便と一緒に排出する薬だ。臨床試験では服用を始めてから4週間後から効果が確認されている。大正製薬は、約1年間(52週)の服用で内臓脂肪面積は平均21.5%、腹囲は平均4.89%減少する効果があったと報告している。ただし、特に最初のうちは、おならをしたときに油や便がもれたり、下痢や便失禁などが生じたりする副作用には注意が必要だ。

「内臓脂肪型肥満の人は、そのまま放置していたら健康障害が生じて肥満症になるリスクがあります。その前の段階で、食事や運動など生活習慣の改善を自分でしたうえで、それでも効果不十分な場合には肥満症にならないように予防しましょうというのがこの薬のコンセプトです。健康寿命を延ばすためにも、万病のもととなる肥満症を予防することが重要です」

 ただ、日本では、BMI18.5未満のやせ過ぎが多いことも問題になっている。やせ過ぎも、免疫機能が低下して感染症にかかりやすく、女性の月経異常と不妊、将来の骨粗しょう症などにつながる。減量が必要のない人の過度のダイエットやGPL-1受容体作動薬などの利用は禁物だ。

「ダイエット目的で、自費で糖尿病治療薬のGPL-1受容体作動薬を購入している人が増えていることが問題になっていますが、栄養障害、重症低血糖、急性すい炎を起こすリスクがあり危険です。また、肥満は遺伝・体質、社会的な要因によるもので、自己責任ではないにもかかわらず、肥満の人は『自己管理』が甘いなどというレッテルを貼られやすいのも問題です。そういった社会的スティグマはなくし、内臓脂肪型肥満や肥満症かもしれないと思ったら、早めに、薬剤師のいる薬局で相談したり内科などの医療機関を受診したりしてください」

(監修/横手幸太郎 日本肥満学会理事長)