Netflix版は「どっちつかず」で「短すぎる」?
キャラクターの改変や国籍への疑問も

「不倫不類」――中国の文化作品評価サイトのNetflix版にはこんなコメントが付けられていた。「どっちつかず」という意味である。付けられたポイントも中国国内映像版に比べて低い。「中国国内版は原著に忠実に作られていて30話あったのに、Netflix版はたった8話。原作で述べられているロジックや背景がすっ飛ばされて、人物も軽すぎる」といった内容の評価が多い。

 また、原作の主要登場人物はすべて中国人だったのに、Netflix版では主人公以外が黒人や白人だったり、インド系だったり、原作では男性だった人物が女性になっていたり、という構成にも不満の声が上がっている。だが、この点に対しては、原作者の劉慈欣がNetflix版の製作顧問を務めており、彼も当然承認済みなのだ。また、劉自身も米国メディアのインタビューで、「Netflix版は世界中の視聴者に向けて作られたものであり、また違った視点で構成されている。中国人ファンには受け入れ難いかもしれないが、わたしは完成が楽しみだ」と述べたと伝えられている。

 また、文革のシーンについても、その時代に詳しい人たちの中からは「現実と違う」「あの紅衛兵のセリフは、あの時代のものではない」「あんなスローガンはなかった」「もっともっと血なまぐさかった」という指摘もある。しかし、前述したようにすでに文革のイメージが脳内から遠ざかっていた人たち(そしてその多くが、Netflixを日頃から楽しんでいる人たち)にとって、あのシーンは十分に衝撃的だったのだ。

 だが、皮肉なことに中国のネット上では文革のクリップがあれだけシェアされたのにもかかわらず、そこでは文革のシーンについて言及するコメントはゼロ。長い評論記事でも、文革シーンの「切り取り動画」を張り付けておきながら、そのシーンの論評は一切書かれていない。

 わざわざけなす人たちも分かっているのだ、中国のネット上であのシーンを論ずるのはご法度なのだと。いや、敢えてそれを論じた「猛者」がいたとしても、わたしや他のユーザーが目にする前に削除されてしまっているのだろう。

 さらには、国営テレビ局の中央電視台までが、全国で放送される番組で『三体』を取り上げて論じている。つまり、一般庶民は“原則”Netflix版を見ることができないはずなのに、国営放送すら無視できないほどに注目されているということになる。

 ただ、ネットのシェアサイトにアップロードされた作品動画は次々と削除されているようで、筆者がネットで手に入れたリンクにアクセスしたら、すでにほとんどがもぬけの空になっていた。海賊版動画だから、当局は著作権保護のために削除させたのか、それとも……?