中国人が仰天した理由
Netflix版は冒頭15分が「文化大革命」だった
そんなさまざまな手を尽くして、Netflix版「三体」を見た中国人視聴者を仰天させたのが、その冒頭の15分間だった。
それは、主人公の父親である物理学者が、実際に中国で1966年以降に起きた文化大革命(文革)で、毛沢東に忠誠を誓う「紅衛兵」と呼ばれる若者たちによって万人が見守る舞台上に引きずり出され、衆人環視の中で批判され、なぶり殺しにされるというシーンである。
これは主人公の性格形成、そしてその後の行動に大きな影響を与える出来事となる大事なシーンだ。ただ、この部分はもともと中国語原著では物語の真ん中あたりに置かれていたが、英語版の出版時に翻訳者のケン・リュウと原著者の劉慈欣が話し合ってその構成を変えて冒頭に置いた。日本語版も英語版を基にした構成になっているため、トップに出てくる。しかし、中国語版では全体の中に包みこまれていた文革の血なまぐさいシーンで始まったNetflix版「三体」に中国の視聴者は度肝を抜かれた。
こういうときの中国人の行動はとても直接的だ。すぐにそのシーンはクリップされ、ショート動画にされてネット上でシェアされた。最も印象的(衝撃的)だった映像シーンを(勝手に)「くり抜い」てその思いとともにシェアし合うというのは、中国のネットではよく使われる手法で、もちろん、それによって興味をそそられた人たちが、前述したような大量ダウンロードの動きを引き起こしたのだろう。