Netflix版は「悪魔的改編」であり、作者は
中国の不名誉な歴史を海外に喧伝している?

 これほど話題になっているNetflix版だが、半面、その衝撃的なシーンと大きな改編に刺激を受けた中国人視聴者の間から、作者の劉慈欣を「非愛国」「中国を辱めた」などと糾弾する声も上がり始めた。中国にとって不名誉な歴史を海外に喧伝させるとは、というのである。

 さらに、中国人民解放軍下のニュースポータルサイト「中国軍網」には、Netflix版のさまざまな改編を「魔改」(悪魔的な改編)だと呼ぶ記事が掲載された。この記事で筆者は、「アメリカンドリームが目に見えて崩壊しているときだからこそ、米国が『多様化と包括性』や『政治的正しさ』を喧伝する」と説き、そしてそれは「彼らの骨の髄まで染み込んだその他の文明に対する蔑視と敵意を、そして心の中で抑えきれなくなった自信のなさを隠そうとする行為」だと結論付けている。

 Netflixという民間企業の製作意図を「国家意識」にまで持ち上げて論ずることが中国的だなぁ、と思わされるが、原則上国内では見ることができないはずの番組に対して、解放軍関係者がわざわざこれほど熱い論評を書くという現実はなかなか印象的である。

 実際にはNetflix版「三体」の評価は、民間評価サイトでは中国国内版よりずっと低いままとなっている。ただ興味深いのは、賛否が真っ二つというよりも、星1つから5つの最高ランクまでそれぞれに20%前後の評価が付いており、人々の意見がバラバラに分かれているところだ。まるでそれは、中国人自身が「純中国的なもの」と「国際化の受け入れ」の間で揺れている姿を示しているようにも見える。

 米国との関係で、大きくきしむ中国。そんなときに米国配信サービスによって大きく改編されて発表されたこの「三体」は、人々に一言では言い切れない思いをもたらしているようだ。