女性活躍推進を成功させる「3本柱」とは何か

 2022年4月には「女性活躍推進法」が改正され、従業員数101〜300人以下の企業にも、女性活躍推進法に基づく行動計画の策定・公表が義務づけられた。これによって、大企業だけでなく、中小企業が女性活躍推進に向き合い始めたことも社会が変わり始めた一因だと考えられる。

池原 さらに、経産省が試験的に社外メンター制度を試行事業したことも追い風になりました。この試行事業に参加した女性たちの“昇進希望者数”が、メンタリングを通して3割弱から7割以上に伸びたそうなのです。これはメディアでも大々的に報じられ、経産省からは効果や取り組み方をまとめたマニュアルも公表されました。社外の知見や人材に触れることが、内部のリーダー育成……特に、女性リーダーの育成に効果的だということがエビデンスとともに明らかになったのです。

 こうした社会の動きを受けて、「メンターになりたい」という方からのMentor Forへのお問い合わせも増えました。私たちが運営する「ビジネス・キャリアメンターアカデミー」を修了して、選抜試験を通過したメンターの人数は、前回の取材時(2021年・夏)は約30名でしたが、現在は100名を超えています。

 さまざまな企業の女性活躍推進を、池原さん自身が実感している理由として、「女性のエンパワーメントだけでなく、男性社員や管理職の意識を変えようとする企業の姿勢」を、池原さんは指摘する。Mentor Forにも、そのための、経営層や管理職向けの講演やトレーニングの依頼が増えているそうだ。

池原 トレーニングを受けた経営層と女性社員が向き合う1on1はとても好評ですね。女性側からは、「経営者がどんなことを考えているのかを初めて知った」という感想などがありました。経営側の役員からは、「女性社員の考えがわかったし、信頼関係が醸成された」といった声があがりました。そもそも、私は女性活躍推進には3本の柱があると思っています。1つ目は女性社員自身のエンパワーメント、2つ目は男性社員、とりわけ、経営層や管理職の意識変革、3つ目は組織風土づくりです。女性活躍推進の必要性について、トップが腹落ちしているだけではなく、経営層や管理職の意識が変わることで、結果的に組織風土全体が変わっていくことを、企業内の多くの方が気づき始めています。これまで、40〜50代の管理職クラスの男性は、研修をしぶしぶ受けに来るケースもあったのですが、最近は危機感を持つ方が増えてきています。社会の変化を皆さんが感じていらっしゃるようです。