佐藤とは、会えばそれこそドラゴンズの話に花が咲く。その中で、佐藤がナゴヤ球場にフェンス広告を出したと聞いて「いいなあ」と山口が思わずつぶやいたときだった。

「じゃあ、出してみる?」
「出せるなら、出したいです」

 山口の希望は球団関係者へと届き、2022年の開幕前から「サカナクション」の広告が登場。広告は個人出稿の扱いで、1952年開場のナゴヤ球場の長き歴史の中でも、山口のようなアーティストが広告を出すのは初めてのケースだという。

「小さい時からドラゴンズが好きで、強かったドラゴンズの象徴のような球場じゃないですか。そこに広告が打てるというのは、自分の“ドラゴンズ人生”にとっても、すごく大きなことでしたね」

 それこそ、今風にいえば“推し活”の一環ともいえるだろう。

 とはいえ、何とも下世話な話だが、どうしても「広告費」の方が気になってしまう。

「中古の軽自動車が買えるくらい、じゃないですかね」

 笑いながら、そんなヒントをくれた。

 そうすると、ウン十万円?百万円まではいかない、といったところだろうか。

「僕、今、東京にいるんで、中日の試合を見に行くとなると、東京ドームか神宮になるんですけど、名古屋に住んでいたら、多分バンテリンドーム ナゴヤでの試合って、毎回見に行ってると思うんです。となると、1年間全試合を見に行くくらいの費用になるかな?だから、試合を毎日見に行っている気持ちですね。応援というか、新しい形で、こういう応援の仕方があるんだなって、自分で広告を出してみて初めて分かりましたね」

 ファームの試合を、ネット中継などでチェックするのが楽しみだという山口は、その試合前、試合後の練習シーンも見ているのだという。

「練習とかで、選手が外野フェンスの前を走るじゃないですか。あのときに、自分の広告の前を選手が走っていたりするのを見ると、嬉しいですね」

 やることなすこと、話すことのすべてが、中日への愛情に満ち溢れている。