大谷翔平のように才能ある人々は日々の努力だけではなく、「ここぞ」という場面で決める勝負強さ、勝負どころでしっかり能力を発揮できる力を持っていると感じたことはないだろうか。頭のいい人が、本番でエネルギーを発揮するために人知れずやっていること、そして絶対にやらないこととは。本稿は、齋藤孝『本当に頭のいい人がやっている思考習慣100』(宝島社新書)の一部を抜粋・編集したものです。
「頭がいい人」は
情報に優先順位をつける
「あなたは今、何を意識してその作業をしているのか」と聞かれて、瞬時に答えられる人は「頭がいい人」です。
ピアノの練習中にそう聞かれたとき「このパートをスムーズに弾けるように左手の薬指を意識しています」とすぐに答えを返すことができる人は、常に課題をもちながら練習している人であり、頭の中も整理されている人です。
スポーツにおいても、たとえばゴルフのスイングを練習している人が、何も考えずに1000回振っても、筋力はつきますが上達はしません。一方、「上半身は腕とクラブを同調させるように意識して振っている」人は、ひと振りひと振りに意味をもたせています。
上達は練習の「質×量」で決まりますから、質がゼロなら答えも限りなくゼロに近くなりますし、後者のように意味をもたせた練習を1000回すれば、必ずショットは上達することでしょう。
要は、自分のやるべきことを鮮明にしておくということです。
価値観が多様化する時代に生きる私たちは、目の前に並ぶたくさんの事項に対して、 優先順位をつける力を求められています。
世の中はうまくいくことばかりではありません。仕事に就いて何か大きなミスをしたり、トラブルに巻き込まれたりしたときは、それを隠したり、そこから逃げたりせず、まずは早めに誰かに相談をすること。それがその場面での優先順位一位です。
自分より経験値の高い人からの知見を得ることで、危機から回避できる、あるいは損害を最小限で抑え込むことができる可能性が高まります。
厳密な意味において、社会を1人で生きている人はいません。「チーム」という概念で選択肢に優先順位をつける力は、今の時代にとても必要とされていることだといえます。
頭がいい人は睡眠の
大切さを理解している
世の中の変化のスピードがどんどん速くなっている中で、このスピード感への対応ということも、今の時代の大きな特徴といえます。とはいえ、表層的な時間という川の流れがいくら速くなろうとも、地下水のようなゆったりした自分の時間を確保することは、これからの時代にこそ必要といえます。
分刻みでスケジュールを組んで仕事をしたり、家事に追われたりするのが「表流水」であるとしたら、読書の時間は「湧水」もしくは「地下水」と考えられます。この2つをもつことで知のバランスがとれるのです。
『論語』という2500年ほど前の孔子の言葉をかみしめる時間は、誰にも強制されないゆったりした自分の時間です。こうした「知の湧き水」が、私たちの知を枯渇させない源泉となるのです。
表面の現代社会に対応しつつも、もうひとつの時間をどうもてるか。それが今を生きる大きなヒントといえるでしょう。