また、そうした時の流れの速さに押され、足を引っ張る最たるもののひとつが、睡眠不足です。自分の生活リズムに合わせて十分な睡眠を確保できれば、頭がすっきりと冴え、身体も健康に保てます。健康を保てているから、頭もスムーズに回転するのです。

 メジャーリーグの長い歴史の中で史上初の快挙を連発する活躍を見せている大谷翔平選手。彼は睡眠をしっかりとるためにチームメイトとの試合後の食事を断っていると聞きます。

 仕事でもスポーツでも、豊かで実りのある時間を過ごしている人は、睡眠の大切さを理解している人です。睡眠の質でホルモンの分泌も変化し、それが身体のリズムに影響を及ぼすことを知っている人です。

 すべての人に平等に与えられている時間をどう工夫し、寝る時間をどう確保するのか。その「知の環境づくり」が、今後の私たちの暮らしに大きく影響してくることは間違いないでしょう。

天才たちに学ぶ
「ルーティンの力」

 偉人と呼ばれる人たちは、私たち凡人が成し得なかった大きな成果を世に残してきました。35歳の若さで世を去った「アマデウス(神に愛された)」ことモーツァルトのような、波瀾万丈の人生を送った天才もいる一方、その日常を見ると案外と平凡な暮らしを送った天才が多いのも事実です。

 哲学者のイマヌエル・カントの日常は、驚くほど規則正しかったことで知られています。生涯独身だったカントは、早朝に起きると紅茶を飲み、仕事は午前中に行い、 午後に散歩に出る時間まできっちり決まっていました。食事は夕方に一日1度だけ。

 あまりに時間どおりなので、「カントを見ていれば時計がなくても時間がわかる」とまで言われたそうです。

 天才が日々こなしていた驚くほど平凡なルーティンワーク。しかし、そこからは 「ルーティンの力」を学ぶことができます。

 無駄なく同じ生活を送るということ。それはすなわち、普段の生活に知のエネルギーを割く必要がないということです。

 考えるという行為を邪魔する外部のすべてをシャットアウトする。これにより、もっているエネルギーのほとんどを「思考」に使えるのです。

 アスリートの中にも、プレー以外の余計なことを考えたくないという理由で、ルーティンワークを大切にしている人は多いようです。元メジャーリーガーのイチローさんが、現役時代のある時期まで、カレーばかり食べていたという話はあまりに有名です。

 その理由についてご本人は明言されていませんが、生活の中の不確定要素を減らすことも理由のひとつと考えられます。