椎名誠さんが「白い馬」(1995)というモンゴルを舞台にした映画を作りました。その中で、実際にモンゴルの老人が、草原で馬頭琴を弾きながら「スーホの白い馬」について語る場面が出てきます。
そこで初めて聞くことができました(その後、実物の馬頭琴も手に取ることができました)。
やはり哀愁のある音色です。死んでもなお、姿を変えて、いつまでもそばにいてくれる……。これは、いわば究極の愛の形でしょうか。
死んでも約束を守ろうとした
健気な白い馬
スーホは草原に置き去りにされていた生まれたばかりの子馬を抱きかかえて連れて帰ります。子馬はすくすくと育って雪のように白く美しい白馬になりました。
「これからも、どんなときでも、ぼくはおまえといっしょだよ」というスーホの言葉を、白馬はうれしく思ったに違いありません。そして死んでもなおこの言葉を守ろうとしたのでしょう。
とのさまに奪い取られた白馬は、追っ手に弓矢で討たれながらも、走り続けてスーホの元に戻ってきます。そして息絶えてしまいます。
山本茂喜 著
突然ですが、私が飼っていた白黒ネコのチーズさんは、神戸の六甲山の捨て猫でした。
ある時、山のふもとまで連れて行かれてまた捨てられたのでしたが、再び山の上まで自力で戻ってきたそうです。時々ニュースにもなりますが、犬や猫のこうした行動はなんとも健気です。ましてや最後の力を振り絞って戻ってきてくれたのですから、「かなしさとくやしさ」で幾晩も眠れなかったというスーホの気持ちもよくわかります。
「そうすれば、わたしは、いつまでもあなたのそばにいられますから」
この白馬の言葉通り、スーホが馬頭琴を奏でると、すぐそばに白馬がいるような気持ちになります。これはある意味、永遠の愛を手に入れた少年と白馬の物語なのでしょう。