「ひとりぼっち」だったごんの心の空白は、兵十の一言によって満たされます。この物語は、心を通わせる相手を求める話だと言えるでしょう。たしかにそれは「友」というより、「愛」を求める物語と言っていいかもしれません。自分の存在に気づいてもらいたい、そう思い続けながら、せっせと相手に愛を捧げる話なのです。

 ようやくわかってもらえた時は、命が尽きる時だった。このアイロニー(皮肉)に満ちた結末には、やはり南吉の切実な願いが込められているようです。

無理やり引き裂かれた
スーホと白い馬の仲

スーホの白い馬
大塚勇三

 スーホがなでてやると、白馬は、体をすりよせました。そして、やさしくスーホに話しかけました。

「そんなにかなしまないでください。それより、わたしのほねやかわや、すじや毛をつかって、がっきを作ってください。そうすれば、わたしは、いつまでもあなたのそばにいられますから。」

 スーホは、ゆめからさめると、すぐ、そのがっきを作りはじめました。

(光村図書 小2)

あらすじ

 モンゴルの楽器「馬頭琴」にまつわる、こんなお話があります。

 昔、おばあさんと二人で暮らす貧しい羊飼いの少年スーホがいました。ある日、スーホは白い子馬を拾います。スーホは心を込めて世話をします。やがて、雪のように美しい馬に育ちました。

 ある時、とのさまが競馬の大会を催します。白馬は見事に優勝しました。

 ところがとのさまは、スーホに白馬を差し出すように言います。スーホは断りますが、白馬は無理やり連れて行かれてしまいます。白馬は、家来たちを振り切り、弓矢で討たれ傷つきながらも、少年のもとに帰ってきました。しかし翌朝、息絶えます。

 嘆き悲しむ少年の夢枕に、白馬が現れます。

 そのお告げの通り、少年は白馬の体をすべて使って、琴を作ります。それ以来、モンゴルの草原を、馬頭琴と、少年の美しい歌声が流れるようになったのでした。

 馬頭琴は、棹の先端が馬の頭の形をした、胡弓や二胡のような楽器です。

 この馬頭琴はいったいどんな音色なのだろう、と長い間気になっていました。今のように気軽にネットやYouTubeで調べられるようになる前の話です。