日銀の次の利上げは「9月」か「25年」か、「7月前倒し」リスクシナリオの条件とは?Photo by Kuninobu Akutsu, Akiko Onodera

大規模緩和を終了させた日本銀行は、いつ、どこまで政策金利を引き上げるのか。木内登英・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストと河野龍太郎・BNPパリバ証券経済調査本部長チーフエコノミストの対談の後編では、具体的な日銀の利上げ時期と当面の利上げ幅、異次元緩和からの正常化の方策などについて予測してもらった。(聞き手・構成/ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

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当面の到達金利は
「0.5%」から「0.75%」か

――景気や物価の動向を踏まえた上で、日本銀行の追加利上げはいつで、政策金利はどこまで上がりますか。

木内登英氏 追加利上げは2025年初と予想しています。FRB(米連邦準備制度理事会)が6月から12月まで1会合ごとに利下げをするとなると、それは日銀が年内の利上げを控える要因となるからです。

 25年以降、2回の利上げをみています。最終的な到達レートは0.5ないしは0.6%。どちらになるかは1回の利上げ幅次第です。この政策金利の水準であれば、現在、0.7%前後の10年国債利回りとも整合的です。

 25年の後半以降は、金利政策の正常化からバランスシート政策の正常化に軸足が移っていくでしょう。同時にやるとリスクがありますので、米国と同様に、ある程度金利を引き上げておいてから、国債保有残高を減らすQT(量的引き締め)に移るとみます。

 これは、円の対ドルレートが口先介入と実際の介入で現在の水準からさらに円安に振れないことが前提です。さらなる円安の進行となれば、年内の利上げの可能性が出てきます。

 市場の金利見通しは慎重です。2年国債の利回りは0.19%。需給の影響を受けないスワップ市場の金利を見ても2年が0.3%、10年が0.8%です。市場はかなりゆっくりとしたペースで金利が上昇するとみています。

河野龍太郎氏 先ほども触れましたが、経済に中立的な実質金利の水準(自然利子率)をマイナス0.5%とみているので、2%インフレが安定的に続くのなら、名目の中立的な金利水準は、1.5%程度になるとみています。

 ただ、約30年間にわたって事実上のゼロ金利政策を続けてきたため、いきなり1.5%に引き上げると金融システムにも大きなストレスがかかる。ですから日銀はゆっくり利上げをしていくことになるとみています。

 私は、半年に1度ずつ利上げをしていくと予想します。最初の追加利上げは今年9月ごろです。その段階で3%程度のインフレ、景気回復を背景とした労働需給の逼迫や企業業績の好調さを確認し、25年春闘も賃上げが期待できそうだと判断して利上げをするとみています。

 利上げ幅は0.15%で、政策金利の水準を0.25%にすると考えています。その後も半年に1度のペースで、25年3月と9月に0.25%ずつ引き上げ、0.75%に到達すると予測しています。

「9月利上げ」を主張する河野氏と、「25年年初」とする木内氏とで、日銀の追加利上げの時期について2人の見解は分かれた。次ページ以降、それぞれの予測の上振れ・下振れケースを語ってもらうとともに、30兆円超の含み益があるETF(上場投資信託)の処理など、異次元緩和からの正常化の方策を予想してもらった。