日銀は6月会合で「一段の正常化」を促進か、元審議委員・白井氏が先読み分析Photo:Bloomberg/gettyimages

日本銀行の元審議委員である白井さゆり氏は、日本銀行が次回の金融政策決定会合(6月13~14日)で、一段の正常化を進める可能性が高いと分析する。現下のインフレ動向やその持続性、円安圧力対処に向けて日銀が取り得る行動とは何か――。人気連載『金利復活』の本稿では、白井氏が定量・定性の両面から、日銀の政策の先行きを大展望した。

「コストプッシュ型」のインフレから
「需要拡大型」への転換は可能か?

 日本銀行は6月13~14日に開く次回会合で、長期国債買い入れの減額を中心に、一段と正常化に向けた動きを進める可能性が高い。

 円相場の対ドル為替レートは、今年2月から150円を超え、日銀による3月の包括的な政策変更後、一段と円安が進む結果となった。4月末には1ドル=160円に到達したことで、財務省が外国為替市場への介入を行った。

 それ以降、日銀も明確に円安へ言及するようになっており、政府と日銀は160円を超える市場圧力の再燃を抑えるため、連携して立ち向かおうとしているように見える。金融政策について、国内経済の弱さから現状維持が妥当、あるいは今後の正常化対応は限定的といった方針を示すことは、円安圧力を増幅させる可能性から、避けるであろう。

 まず、原材料価格の上昇や円安などの原因から生じている現在のコストプッシュ型インフレを、需要拡大型のインフレに転換することは可能なのだろうか。

 日本の現在のインフレは、主に食料のインフレ率(価格が不安定な生鮮食品価格を除く)が緩やかに低下する傾向を反映し、以前と比べて下降傾向にある。それでも食料インフレは、直近の4月インフレ率(2.5%)の半数を占めている。

 一方、エネルギー価格のインフレ圧力は高まっている。ガソリン価格は既に4%台の上昇を見せ、5月からの電気料金などへの補助金縮小、6月からは廃止により、インフレ率はいったん上昇するだろう。

 しかし、補助金の影響は1年程度続く一時的なものであり、しかも円安の影響は減衰してくるので、外的要因が発生しない限り、2025年に総合インフレ率は2%を下回りそうである。

 日銀は、インフレ圧力には2種類あるとし、「第一の力」と「第二の力」という言葉で説明を展開している。まず、原材料価格や円安などのコストプッシュ要因に起因する第一の力は現在インフレの主因だが、一時的である。このため、日銀は、第一の力から第二の力へとインフレ圧力の源が変化すると説明している。

 そして、内需と国内経済の改善に基づく「賃金・物価の好循環」を反映した第二の力が最終的に優位に立つことで、インフレを2%程度で維持することができるとしている。

 この望ましいインフレの状況を実現するには、三つの要因が好転する必要があると考えられる。本稿では、現下のインフレの動向とその持続性、そして市場の円安圧力に対処するために、日銀が取り得る行動について考察する。