警察の裏金は必要悪?実名告発者「何らかの方法で続けている可能性はゼロではない」写真はイメージです Photo:PIXTA

日本の治安を維持し、我々の生活を守ってくれている警察。しかし、その巨大な組織では古くから裏金作りが行われてきた。告発の歴史と裏金作りがなくならない理由とは。※本稿は、『腐敗する「法の番人」:警察、検察、法務省、裁判所の正義を問う』(平凡社新書、平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。

23億円とも言われている
北海道警察が作った裏金

 2021年12月、警視長で北海道警察釧路方面本部長を務めた原田宏二が83歳で亡くなった。

 2004年、警察で裏金づくりが行われていることを、マスメディアへ実名で顔を出して告発する記者会見を行った北海道警察高官の立役者だった。警察の裏金問題は、2003年11月、北海道警察旭川中央署の捜査費流用疑惑に端を発する北海道新聞の調査報道から始まった。

 自分が署長や警察幹部として毎月一定額を受け取って使用しており、また方面本部長を退職後、天下り先の企業での勤務を終了した後であり、忸怩たるところはあっただろう。

 しかし、捜査費が足らず犯罪に手を染める警察官の存在を知り、実際には裏金づくりをしていながら、それを否定している北海道警察を問題と考えた。

 また、正義感と使命感に燃えて警察官となった人たちに偽の領収書をつくらせ、警察組織が犯罪に手を染めさせることを強いている慣行を改める必要があると考え、公的な場で警察における裏金の存在を告発した。

 原田は、自分が裏金を使っていたことについては正直に告白したが、証拠となる書類は持っておらず、北海道警察は裏金の存在を強く否定するとともに、関係する証拠の書類を破棄した。

 しかし、裏帳簿を管理する立場にあった警察署の次長で、すでに退職していた、原田に敬意を抱くかつての部下が、同じく実名で顔を出して記者会見を行った。この元警察署次長は裏金の管理をさせられることが嫌で早期退職をしており、捜査費の不正流用の事実を認めようとしない北海道警察の不誠実な対応に憤りを感じ、証拠を示して記者会見を行ったのである。

 このため北海道警察は、裏金づくりを認めざるをえなくなった。

 北海道警察は捜査費などを不正支出していたことを認め、235人を懲戒処分にし、利子を含めて約9億円を国と北海道に返還した。なお、告発者によれば、情報提供協力者へ捜査費(国)や捜査用報償費(道)を支払ったという虚偽の領収書を書いたり、カラ出張をしたりしてつくった裏金は、実際には23億円に上るのではないかと言われている。