原田は「明るい警察を実現する会」を創設して、相談、集会、講演や執筆活動などを行った(北海道新聞取材班『追及・北海道警察「裏金」疑惑』、原田宏二『警察内部告発者』)。

 この後、各地の警察で、現職または退職後の警察官による裏金に対する告発が相次いだ。

警察の裏金告発の歴史
告発した現役警察官は左遷

 現職警察官として、初めて内部告発したのは愛媛県警の仙波敏郎である。仙波は、裏金づくりのための領収書への署名・捺印を拒否したために冷遇されていたが、高校時代の同級生のジャーナリストの助力を得たり、市民オンブズマンの支援を受けたりして、日本で初めて現役警察官として、実名で顔を出して内部告発を行った。

 仙波は愛媛県のエリート高校の松山東高校の出身者である。父を早くに亡くしたため、大学へ進学しないで警察官になった。正義感が強く、最年少で巡査部長に昇進するほど頭脳明晰であった。見込まれて昇格の話もあったが、虚偽の領収書作成への協力を拒んだため巡査部長に留め置かれた。

 2005年1月に市民オンブズマンの弁護士からの依頼を受け入れて記者会見で告発したところ、報復を受け、左遷されて一方的に望まない部署に異動させられた。その後、支援活動によって元の部署へ復帰し、定年退職した。

 仙波によれば、勤務していた警察署では、年間約1200万円の裏金がつくられ、約800万円が署長の餞別に充てられていた、とのことである。

 ノンフィクションライターの小林道雄が、刑事警察から公安、防犯、風俗まで、府警本部長から巡査まで多様な警察官へのインタビューに基づいて書いた本のなかで、元大阪府警本部長は、本部長が餞別を集めるばかりではなく「今では署長ですら、辞めるとなったら企業まわりをやって金を集めている。挨拶したあとを、次長あたりの部下がまわって金を受け取ってくるんだな。そういう役割も決まっているんだよ」と述べている(『日本警察 腐蝕の構造』)。

 挨拶回りのなかに、防犯協会に所属するパチンコ・パチスロ店などが含まれていることは想像に難くない。