■Case5「残業お願いできる?」

忙しいときには、新入りの手も借りたいもの。上司世代は「そろそろ慣れてきたころだし、問題ないだろう」と、「○○さん、残業お願いできる?」とストレートに伝えがちですが、人によっては「あれ、もしかしてブラック企業に入社しちゃったのかも…」「配属ガチャに外れたかも…」などとネガティブに捉えてしまうかもしれません。

この場合は、このような伝え方がお勧めです。

◎「中村さんの企画書がクライアントに刺さるんだよ。明日までにお願いできない?」

これは、伝え方の技術「認められたい欲」を使った伝え方です。人は認められると、相手の期待に応えたくなるもの。自分の企画書がクライアントに刺さるのであれば、残業してでも頑張ってやってみようかなと思ってもらいやすくなります。

伝えたいことは、どちらも同じ。しかし前者の伝え方だと「ヤバそうな部署に来ちゃったかも」と不安を覚える一方で、後者の場合は「自分の力が活かせる、やりがいがありそうな部署だ」という気持ちになれるでしょう。

このように、伝え方ひとつで天と地の差が生まれてしまう可能性があります。ぜひ伝え方の技術を使って、相手が前向きに受け止められる方法を試してみてほしいですね。

人手不足の折、どの企業でも新しく入った新入社員や転職者、異動者に長く腰を据えて働いてほしいと願っていることでしょう。しかし、伝え方を間違うと、「この職場、なんか働きづらい」「自分には合わなそうだ」などの印象を持たれてしまうかもしれません。はじめにギクシャクしてしまうと、知らず知らずのうちに壁ができてしまい、なかなか信頼関係が築けず早期離職してしまう…なんてことにもなりかねません。

今回ご紹介したように、伝え方の技術を使って少し伝え方を変えるだけで、「この職場はやりがいがありそうだ」というポジティブな印象を与えることが可能です。ほんの十数秒分、言葉を追加するだけで、場合によっては「!」を一つ追加するだけでも、相手が受ける印象をガラリと変えることができますよ。

即アウト! 「新入社員に嫌われるパワハラ上司」に共通するざんねんな伝え方佐々木圭一(ささき・けいいち)
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師
新入社員時代、もともと伝えることが得意でなかったにもかかわらず、コピーライターとして配属され苦しむ。連日、書いても書いても全てボツ。当時つけられたあだ名は「最もエコでないコピーライター」。ストレスにより1日3個プリンを食べる日々をすごし、激太りする。それでもプリンをやめられなかったのは、世の中で唯一、じぶんに甘かったのはプリンだったから。あるとき、伝え方には技術があることを発見。そこから伝え方だけでなく、人生ががらりと変わる。本書はその体験と、発見した技術を赤裸裸に綴ったもの。本業の広告制作では、カンヌ国際広告祭でゴールド賞を含む3年連続受賞、など国内外55のアワードに入選入賞。企業講演、学校のボランティア講演、あわせて年間70回以上。郷ひろみ・Chemistryなどの作詞家として、アルバム・オリコン1位を2度獲得。「世界一受けたい授業」「助けて!きわめびと」などテレビ出演多数。株式会社ウゴカス代表取締役。伝えベタだった自分を変えた「伝え方の技術」をシェアすることで、「日本人のコミュニケーション能力のベースアップ」を志す。
佐々木圭一公式サイト:www.ugokasu.co.jp
Twitter:@keiichisasak
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