運動というのは、簡単にできない人からできる人までいろいろですから注意が必要です。病気の人に、運動しろと言っても難しいですね。お年寄りになると、例えば、机に手をついて片脚で立つ。それだけで筋肉の運動になるのです。椅子に座っているときから、立って、また椅子に座るを繰り返す。単なるスクワットですが、これが脚の運動として非常に良いことが分かっています。

書影『70歳までに脳とからだを健康にする科学』(ちくま新書、筑摩書房)『70歳までに脳とからだを健康にする科学』(ちくま新書、筑摩書房)
石浦章一 著

 運動をすると何が変わるかというと、筋肉が付くと同時に骨に力がかかり、骨がスカスカにならないのです。ほっておくと老化に伴い、骨の中の空洞が大きくなっていきます。ところが骨に力をかけると、骨の中身が詰まった形になり、骨折しづらくなります。これを骨密度が上がると言います。運動選手で調べた結果では、例えば重量挙げの選手は一番、骨密度が高いのです。逆に水泳は浮力がかかるので、骨にあまり力がかかりません。なので骨密度がそんなには上がらないことになる。力学的負荷をかければかけるほど、骨は強くなることが分かっています。

 ジムに行かなくても、歩くだけでもいいのです。先ほど厚生労働省が、8000歩から9000歩、歩きなさいと言っているという話をしましたね。8000歩や9000歩というのは、自分で歩こうと思わないと、こなすのが結構大変なのです。でも皆さん知っていますか。私たちの先祖である人類、クロマニヨン人とか1万年前の人類というのは昔、毎日1万4000歩から1万8000歩、歩いていたと言われています。今の人類はこれに比べてずっと歩かなくなってきたのです。車に乗ってばかりの生活はもっと悪いので、気をつけるようにしてください。