組織でも不可欠な「個人として生きる能力」<br />鍛えるには異文化に触れ「常識」を疑おう坂之上洋子(さかのうえ・ようこ) 経営ストラテジスト/作家。国際機関、企業経営者、政治家、NPO代表等のアドバイザーを兼任。社会貢献系のプロジェクトを中心に活動している。

坂之上 お金って、すごく大事じゃないですか。こうした国家的プロジェクトに関わることも、身近な家庭で起こる問題も、すべてのことにお金が関わっていますから。だからこそ、山口さんが考えている非貨幣経済に対して私も関心があります。

 特に、ネット社会になったことで、いま社会的に顕在化していない「何か」が、ものすごく大きなトレンドになっていくかもしれない可能性を感じています。現代は、違和感があっても問題が大きすぎて「仕方がないよね」で終わっていたことに対し、愛の軸が強い人は愛しか叫ばないし、お金の軸が強い人はお金のことしか叫ばない。そのバランスをどう考えればいいのかということを意識する必要はありますよね。

 

お金に対抗し得る“言葉”を持たないと、大事なものを失ってしまう…?

山口 お金が「物質的なもの」を担保し、愛が「生命的なもの」を担保するとすれば、思いの連鎖という点と点を結ぶ文脈こそが「生命的なもの」だと思うんです。僕はお金を「言語化された価値と信用」と定義しているので、コミュニケーションしやすいツールだと考えています。でも、お金で「物質的なもの」は表現できても、「生命的なもの」は表現することができません。「生命的なもの」を理解してもらうには、その本質をしっかりとつかんで、共感をもって伝えることが大切です。コミュニケーションの王様とも言うべきお金という非常に強いメディアに対抗し得る言葉を持たないと、本当に大事なものを失ってしまうのではないでしょうか。

坂之上 よくわかります。

 私は、出会った人とお互い「一緒に仕事をしてよかったね」「ずっと残る仕事ができたね」と言い合える仕事をしたいと考えています。もちろん貯金は大事ですが、それよりも一緒に仕事をした人と後になって「あのとき楽しかったよね」と振り返ることができるそんな「資産」を大事にしたいですね。

山口 わかります。お金も欲しいですけど、かつての知り合いや友人から米を送ってもらえるような人になりたいですね。むしろ、そのほうがずっと難しいかもしれません。心がつながっているということですから。