愛の軸を高めることで、機動力と強さを兼ね備えた人間になれる

坂之上 私の娘は小学校3年生の途中までアメリカンスクールに通い、現在は日本の区立小学校に通っています。両方の教育システムを見て気づくのは、日本は「ものすごく質の高いフォロワー」を育成する教育だということです。

山口 そうですね。

坂之上 もちろん、アメリカンスクールより日本の教育のほうが良い面も、山ほどあるんですよ。でも、機動力を学ぶのは、いまの日本では難しいですね。

山口 日本は、いまだにリーダーでなく、フォロワーを育てるようなオペレーショナルな教育をしているイメージですよね。

坂之上 たとえば、激しい雨が降っている日に、長めの長靴を履いて行けば?と勧めたとします。アメリカンスクールのときは、娘も何の躊躇もなく長靴を履いて学校に行きました。それが、日本の学校に通い始めると「誰も履いていないから」といって、びしょ濡れになろうとも運動靴で行くようになったんですね。

山口 そうなんですか。

坂之上 これは娘の順応性が高いという問題ではなく、誰もがそうなってしまうことです。就職活動をするときにみんな同じようなリクルートスーツを着て面接に行くわけですからね。日本では、ルールからはみ出さないっていうのが良いこととされているんですよ。それを小学3年生でちゃんと嗅ぎ分けてる(笑)。山口さんがおっしゃるように、これからはくっついたり離れたりする能力を磨かなければならないので、娘にどうやってはみださずに、多数の意見をまとめて動かす力を身につけさせるかは、私にとって大きな課題です。機動力って、つまりは状況に応じてすばやく動ける能力ってことでもあるのですから。