この文言は、中国のSNSで大きな話題となり、写真や動画が多くのSNSの注目ランキングで上位を占めた。コメント欄には、たくさんの「いいね」が付き、「支持する!明日から『香飄飄』を買って飲もう」「正面から敵対する姿勢がすばらしい!」「こんな愛国心を持つ企業がたくさん現れてほしい」など、称賛する声が多く上がった。

「香飄飄」の微博(ウェイボー)の公式アカウントも「社員の個人的な行為だが、よくやった!」と支持する姿勢を示し、その社員に10万元(約200万円)のボーナスを出すと発表した。中国メディアの「新浪財経」によると、この一件への注目度が高くなるにつれ、それまで業績不振だった「香飄飄」の商品に注文が殺到。1日の売り上げは以前の2500元(5万円)から100万元(2000万円)へ、約400倍増えたという。さらには上海証券取引所の株価も連日ストップ高になった。

 しかし、その後すぐに、この「香飄飄」の件は、大きく風向きが変わった。この騒動は「事前に用意周到に準備をした上での、日本批判を使った販売促進だ」と見破られたのだ。

 この「香飄飄」は中国国内では有名なミルクティーのメーカーだが、近頃は添加物の多さなどが指摘されていた。最近の中国では、健康志向が高まり、天然の材料で作られる健康飲料が人気になっているため、「『香飄飄』は商品の改善に力を入れるのではなく、日本批判という手法を使って低コストで販売数を上げた」「モラルがない」など、ネット上では、多くの消費者から批判の声が上がっている。

この「香飄飄」のケースは、中国の一部の企業が商業的利益のために「愛国行為」を利用しようとする風潮を象徴しているかのように思われる。しかし、ここから話題を変えて、もう一つの「愛国行為」のトレンドについて見てみたい。それは、中国の若者の間で盛り上がりを見せる、「漢服ブーム」による「愛国」心理の高まりである。

伝統衣装・漢服を着て日本の観光地を歩く意味

 最近、中国の民族衣装である「漢服」を着て、京都や奈良など「歴史のある街」や東京の観光地などを闊歩する中国人の若者が増えている。近年、漢服は中国の若者の間で一大ブームとなっており、さまざまな観光スポットで「漢服」を着て撮影するツアーも多い。

 自国の伝統や文化を見直し、自信をつけ、化粧品やファッションなど中国産・中国テイストの商品を好んで消費するトレンドは「国潮」と呼ばれて広がっている。この延長線上にあるのが、唐や明の時代の伝統的なファッション要素をアレンジした「漢服」の流行といえる。

 こうした理由で、中国のSNSでは、色鮮やかな「漢服」を身に付けた中国人の若い女性たちが日本の観光地などを歩き、すれ違う歩行者に振り返られたり、日本人から「きれいね!」とほめられたりする動画が人気があり、拡散されている。

 自国の民族衣装を誇らしげに着て「異国の地」を訪問する。これ自体は何の問題もないし、現地の人も「お世辞」の一つも言うだろう。しかし、こうした活動を「愛国運動」と認識し、広めようとする人がいるのだ。