日本の観光地を漢服で訪問したSNSのコメント欄には、決まって「中国の優秀な伝統を海外で伝えて、国威を発揚することができたね!」「快挙だ!あなたたちを誇りに思う」など、海外で自国の文化を押し付けることができたと認識している人やこれを自慢する人が少なくない。

 こういう、ある種“自画自賛”的なコメントに対しては、実は他の中国人からの批判も多い。

「これで、日本は自由で寛容の国だということが分かった。もし逆に中国で日本の着物を着たらどうなるか。結果は言わなくても誰にでも分かるだろう……」

「こんな大仰に『漢服』を見せびらかして、日本人は何とも思わないのですか?日本の警察は来ないの?日本は民度が高い、自信のある国だね」

 このようなコメントが寄せられる背景には、あるできごとが関係している。ここ数年、中国で日本の着物や浴衣を着た中国人女性が警察や街の見知らぬ人たちに非難され、「文化侵略だ」「公序良俗に反する」という理由で、とがめられたケースが続出していたからだ。

新宿や渋谷で大音量で音楽を流し「国威発揚」する人も

 来日10年以上、現在京都在住の中国人のユーチューバー「五岳散人」さんは、「京都でよく『漢服』を見かける」が、「日本人は誰も気にしていない」と話す。その理由は「日本は民主国家であり、たった一着の服装を政治や国に結びつけることはありえない。ましてや日本はコスプレ大国。どんな奇抜な服装も見慣れている」からだと述べた。そして「いちいち認めてもらいたいのが、自信のなさの表れだ」と続けた。

 ほかにも、新宿で愛国歌を流し「国威発揚」する中国人もいる。中国人観光客が新宿や渋谷などの繁華街に一人で出かけ、大音量のスピーカーを手に持ち、中国の愛国歌を流しながら、カメラに向かって「どうだ!ここは日本の新宿だ!国威発揚しているぞ!わが国は偉大だ!」などと叫ぶのだ。こうした動画も、中国のSNS上でよく目にする。こんなことをしても、正直、多くの日本人は「少し変わった人がいるな」という程度で、誰も気に止めないだろう。見ていても、お寒いだけだ。

 こういった「愛国行為」は、中国の人々の愛国心を煽り、中国内では人気を博しているのだが、必ずしも効果があるとは限らない。むしろ、将来的には、国威を発揚するどころか、自国の印象を悪くしてしまうケースも少なくないだろう。