反日は仕事、訪日は生活

 筆者のような一定年齢以上の中国人から見れば、多くの中国人の若者が日本の観光地で着ている「漢服」は、布地もペラペラで安っぽいものだ。正直なところ、こんな程度の漢服を自慢げに着て歩くくらいなら、日本の着物をきちんと着て、日本の文化を体験したほうが良いかもしれない。

 歴史上の経緯で、そして特に昨年原発処理水の海洋放出があって以来、中国人にとって、日本は非難しやすい対象である。日本の悪口であれば、いくら言っても、政府の規制を受けることはなく安全だ。もともとこうした背景があり、さらにSNSが発達している今日、日本に対し攻撃的で過激な発言をすればするほど注目され、アクセス数を稼ぐことができる。悪口や批判が過激なほどウケるのは、中国も日本も同じだろう。

 面白いのは、そういう行動をする中国人の中に、「日本が大好きな人」も含まれていることだ。筆者の知り合いの中でも何人かいるが、彼(彼女)らは、日本の企業に勤めたり、ときどき来日して買い物やグルメを楽しんだりしているのにもかかわらず、SNSでは日本を得意げに批判することが多い。そのほうが中国内での受けが良いからだ。もはや建前と本音を使い分けして、「反日は仕事、訪日は生活」な状態である。相手によって態度を180度変えるこうした行為は非常に恥ずかしいので、止めていただきたいと思う。

 他国を悪くいうことで、愛国心を煽り、注目を狙う。このような手法は一体いつまで通用するのだろう。前出の中国人ユーチューバーである「五岳散人」さんの言葉を添えて、本稿を終わりたい。

「大国とは、人口が多いとか、国土が広いとかではない。その国に寛容度があるか、心が広いかである」