慶應義塾大学は1990年に湘南藤沢キャンパスを開設した際、日本初のAO入試を実施した。以来、AO入試を導入する大学は増加の一途だ。かつて一般受験による入学者が大多数だった頃は、過酷な一般受験を経ていないAO入試・推薦組は、学内でも一段下に見られていた。しかし、親世代のそうした認識は、もう改めたほうがいい。いまや一般受験の比率が50%を切る中、推薦組の間でも熾烈な競争が行われているという。※本稿は、宮本さおり『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド:親と子のギャップをうめる』(笠間書院)の一部を抜粋・編集したものです。
大学入学者の半数以上が
推薦型の入試
大学受験で一般入試の枠が減り、推薦入試が増えるという話題を見聞きすることが増えています。「大学全入」時代同様に誤解を招いている部分があるので少し細かく見ていきましょう。
親世代が大学入試を経験した頃は、テストによる一般選抜試験(一般入試)や、大学センター試験などによる入学者がほとんどでした。しかし現在はこの状況が大きく変わってきています。
文部科学省が大学入学者を対象に調査をしたところ、2022年度は推薦型の入試による入学者が50.3%と、はじめて半数を超えました。
推薦型の入試は「学校推薦型選抜」と「総合型選抜」という2つに分けることができます。年内に合否が出ることが多いため、「年内入試」という呼び方をされることもあります。
テスト一発勝負の入試と違い、高校時代の成績や活動の評価、実績、大学に入学後の意欲を元に合否を決めていくものです。「学校推薦型選抜」は、生徒が学校からの推薦を受けて出願する入試のため、学校の成績が非常に重要になります。そして、学校推薦型選抜の中にも、指定校推薦と、公募推薦の2つの種類が存在します。
指定校推薦は、大学側が指定した高校のみに募集がかかるため、全ての学校の生徒にチャンスがあるわけではありません。また、各学校に与えられている定員枠は大学付属校を除くと非常に少なく、その学校に与えられた枠が1人ということもあります。同じ高校内に希望者が複数人いた場合、校内審査を勝ち抜く必要があります。
校内の競争に巻き込まれる可能性はあるものの、指定校推薦の場合、大学は指定した高校の学力や教育を高く評価しているため、こういう教育で育った生徒にぜひうちの大学に来て欲しいという思いがあります。指定校推薦の出願者が不合格となる可能性は低いため、第一志望校の指定校推薦をもらえるのなら、ぜひ出願してほしい入試です。