「1話目と2話目」が共通要素によってひとつのグループを形成しています。次は「3話目と4話目」が二つ目のグループを形成しているのかと思えば、「2話目と3話目」が新たなグループをもうひとつ作っています。特徴的な配列だといえるでしょう。

「2話目」がグループの間で重複しているのですが、そのことによって「2話目」が異なるグループを接続する要素になっているのが分かります。さらに、次は「3話目」がまた別のグループとの接続要素になっている、という仕組みです。

 最後に事例として挙げた「3話目+4話目+5話目」は分かりやすく、ここは差し出した物が同じ価値の別の物として返還される「等価交換」のモティーフが共通要素として使用されているグループです。

 そして、実は「1話目」にも「等価交換」が使用されています。ただ、その「等価交換」を誰が命じているのかという点で、「3話目+4話目+5話目」のグループとは異なるのです。

「1話目」では等価交換を要求したのは傲慢な人間でした。それに対して「3話目+4話目+5話目」では、人を超越した存在がそれを命じています。

 つまり、「等価交換」はよくある概念ではありますが、この『岸辺露伴は動かない』の中では、それを「命じる」ことが許されているのは、神的存在、幽霊、自然界、強大なパワーを持つ怪異体のみなのだということが示されているわけです。

 人間はそのルールを受け取る側でしかなく、「運命」を前にするといかに人間が無力なのかが分かります。人間が「等価交換」を他者に押しつけた場合、その人物には罰が下されてしまいます。