「心をこめて作った料理を、そんな風に持っていくな!料理が崩れたら、どうするんだっ!」

 ウエイター経験が長かった私は、4皿を一度に持って運ぶことに慣れていた。だから店長に「絶対やるな」と注意されていたのにもかかわらず、その忠告を無視したのである。

 早朝から出勤し、お客様のことを思って料理をしていた3人のシェフのことを考えていなかった。

(2)は、私たちコンサルタントがとても重要視することだ。

 たとえば毎朝5分、10分遅れてくる部下がいたとしよう。何度も「遅刻するな」と言い聞かせても、「5分や10分の遅刻にそこまで言わなくても」と言い返されたら、「ふざけるなっ!」と言いたくなるだろう。言葉遣いは気をつけなければならない。しかし、「徐々に、できるようになればいい」ということではなく、「即刻ルールを守らせなければならない」ときは、何よりもインパクトが重要だ。

 言葉を尽くしても納得しない相手だ。そういう相手には、いったん思考停止にさせるぐらいのインパクトが必要だ。

「叱る」最大の目的は
相手の行動を変えること

 咄嗟のときなら、仕方がない。しかし、そうでないなら、叱るときは感情をコントロールしよう。

 頭にきて、唇が震えていたり、胸の動悸が激しかったりするときは、叱るのをやめたほうがいい。感情に振り回されて、「叱る」がうまく機能しないからだ。

 こうなると、目的が「相手の行動を変える」ではなく「詰る」「罵る」になってしまう。

 大事なことは、相手の行動を即刻変えることである。厳しく叱らないと相手がすぐに行動を変えないから、その手段をとるだけだ。叱ることが目的ではない。

 では、どのように感情をコントロールするのか?

 演技をすればいい

 つまり、事前に準備したセリフと感情レベルで、相手を叱るのだ。

 演技でやっているからこそ、感情に振り回されることがなくなる。役者さながらの感情コントロールができたらベストだ。

 何度も言い聞かせて、行動や意識を変えようとするときは、叱ってはいけない。