「他はともかく、今回のことはキチンとやらないとマズいな」という印象を与えられたらいい。こうすれば、ルールは形骸化されなくなる。
そして、「ちゃんとやらないとダメだろ。言ったはずだ」と注意したときに、効力が高くなるのだ。
「注意」と「指摘」のつかいわけは
部下の理解度を見極めてから
「叱る」ときと「注意する」ときの共通点は、相手がわかっているのにもかかわらず軽んじているときだ。著しく気が抜けていたり、意識が低くなっているときに使う。
しかし、もし、相手が意識するのを忘れているだろうな、もしくはちゃんと伝わっていないだろうと思ったときは「指摘」してみよう。
「先日の会議で部長が、残業を20時間以内にする、と言っていたけど覚えているか。なのに、今月の時間外労働がもう25時間を超えているじゃないか」
こう指摘したとき、部下がどう反応するか、しっかり観察しよう。このようなときに必要なことが「ヒューマンスキル」である。
もし、相手の表情や言動に触れて、わかっていなかったと判断したら、「部長はかなり本気で組織を変えようとしているから、頼むよ」と笑顔で指摘すればいい。
部下は、残業を20時間以内にしなくてはいけないことは、わかっていたし、部長が会議で言っていたことも覚えている。
では、この部下がわかっていなかったこと、知らなかったことは何だったか?
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横山信弘 著
それは「部長の本気度」である。部長が本気で組織を変えようとしていることを知らなかったのなら、仕方がない。「注意する」のはやめて「指摘」しよう。
しかしながら、「申し訳ありません。以後気をつけます」と部下が言っても、部下の表情や態度を観察すると「部長が本気で組織を変えようとしているのを、わかっているな」と判断した。そうしたら「指摘」では済まされない。
「部長が本気で改革しようとしているの、わかってたんだな?だったら絶対に20時間以内にしなさい。できない場合は、事前に部長へ申請することになっていたはずだ。ちゃんとしろよ」と、このように真顔で「注意する」。
「指摘する」程度で相手は変わらない。