自動車メーカーにとって
人=製造原価で「コスト」
日本で一番多くのお金を稼いでいるトヨタの従業員年収が895万円だと申し上げました。
日産、ホンダもだいたい同じ水準です。一方で同じ自動車業界でもSUBARUやマツダの場合はちょうど同じ658万円とやや低い水準です。
低いとは言っても年収658万円なら、いまの日本の平均世帯年収と比較すればうらやましいほど高い水準かもしれません。
しかしここで「三菱商事のこの夏のボーナスの平均支給額は641万円になる」という情報をお伝えしたら皆さんはどうお感じになるでしょう?
世界的な自動車メーカーで働き、日本経済を支える企業の従業員の年収が、大手商社の「夏のボーナス」とほぼ同じなのです。
これを「業種が違うから」と言い切るのは簡単ですが、それにしても不思議な格差です。なにしろ人材が企業を支えているという点では、商社も自動車メーカーも同じだからです。
そこで先ほどお話しした「自動車メーカーでは人は製造原価に反映されるので、常にできるだけコストを下げる方向に発想が進むのだ」という話が関係してきます。
ちなみに会計に詳しい方は「トヨタの研究開発費や本社スタッフの人件費は製造原価じゃないよ」とおっしゃるかもしれません。その通りなのですが、トヨタのディーラーから見ればどちらも製品原価で話は同じです。
もちろんトヨタや日産、ホンダといった完成車メーカーは政府の顔をたてて、今年の春闘では大幅なベースアップを回答しています。それはそれでいいのですが、実は構造的に自動車業界は大きな問題を抱えています。