「人=財産」と捉えなければ
日本経済の未来は危うい

 総合商社と自動車業界、ちょうど正反対に見えるふたつの業界で問題提起をさせていただきましたが、日本経済全体で見ても問題意識は半々に分かれているように思われます。

 つまり、「人は財産だ」という考え方と、「人はコストだ」という考え方に日本はまっぷたつに割れているのです。

 では、日本の賃金の未来はどちらに進むのでしょうか。

 ひとつ幸いなことには、日本企業は今、どこでもたいへんな人手不足の問題を抱えています。そして少子高齢化のトレンドを考えるとこの状態は長期的によくなる兆しはまったくありません。

 だとすれば多くの企業が「人に投資をしなければ事業は継続できないし、成長できない」と気づいていく方向に、世の中は向かっているわけです。

 そして今はまだ、自分の会社の社員のことしか考えられない企業も、いずれ「取引先の社員にも投資をしなければ長期安定的な取引は継続できない」と気づく日がくるのではないでしょうか。

 日本の実質賃金が長期的に下げから上げに転じるには、まだまだ経済界の意識改革が必要な状況ではあります。

 しかし、人的資本経営に取り組まなければ長期的な未来がないことも事実なのです。