多くの日本企業は採用市場で
「外資との給与競争では負け」と諦める
日本でのAIエンジニアは引く手あまたで、情報科学専攻の新卒の平均年収は598万円だという数字があります。ソニーでは大学院卒の新卒の最高年収を730万円に設定して、こういった人材を確保しようとしています。
しかし、問題があります。このような水準では優秀な人材が確保できないのです。
たとえばグーグルの新卒エンジニアの給与は13万ドル、つまり約2000万円からです。日本人学生が行きたいと考えるかどうかは別にしてファーウェイのような中国IT大手では新卒技術者は年収3000万円の水準です。
最近もあるIT企業のトップの方とこの話をしたところ「正直、東大の情報科学専攻の優秀な学生は、外資と競争になったらうちではとれない」と本音を吐露されていました。
ここが私が面白いと考えるところなのですが、日本の大手IT企業と日本のメガバンクはどちらも似た「外資との給与競争では負け」という考えを持つ一方で、日本の五大商社だけはそうは考えないのです。
商社では優秀な人材を安定的に採用して、高い報酬を支払って、彼らにビジネスの立ち上げ方を叩きこんで、投資先のビジネスを拡大させれば、大きな利益を得られるからペイすると考えるのです。
つまり、人的資本経営の考え方が企業の中に浸透しているのです。