法改正で知らない間に損をしない! 相続・贈与・実家の新常識#6Photo:PIXTA

相続した実家の扱いは悩みの種だ。既に持ち家で暮らしており、将来住む予定がないケースも多い。特集『法改正で知らない間に損をしない! 相続・贈与・実家の新常識』(全13回)の#6では、「空いた実家はそのまま貸しなさい」と指南する空き家再生コンサルタントが、実家を貸すノウハウを伝授する。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

賃貸市場で一戸建ては希少で需要あり
「実家はリフォームなしでそのまま貸せる」

「空き家になった実家はそのまま貸すのが一番だ」

 そう力説するのは空き家再生コンサルタントの吉原泰典氏だ。吉原氏自身も、岡山市内にある築70年超えの一戸建ての実家を貸しに出し、月8万円の家賃収入を得ているという。しかも、貸す際にリフォームはしていない。

 それほどコストをかけなくても、実家が思いも寄らぬカネを産む資産に変わると実感した吉原氏は、自らの経験を踏まえて空き家再生の相談に乗るようになり、これまで約75軒を手掛けたという。

「多くの人が『あんな家には住めない』と思い込んでいる。しかし、不用品がメルカリで売れるように、あなたにとって不要になった実家でも、他の誰かが住みたいというニーズは存在する」と吉原氏は語る。

「実家は貸せる」と吉原氏が主張する根拠の一つは、賃貸市場における一戸建ての需要と供給のミスマッチだ。家族が増えたり、騒音問題に悩んだりしたなどの理由で、アパートやマンションから一戸建てへの住み替えを希望するケースは少なくない。しかし、意外なことに一戸建ての賃貸物件は少ないのだ。

 例えば大手不動産情報サイトで、東京23区内にある1LDK以上の一戸建ての賃貸物件を探すと約2万7000件の情報が出てくる。一方、同条件のアパートやマンションならば約48万件とその数は10倍以上だ。複数の不動産会社が同じ物件情報を掲載する重複があるため実際の物件数と差があるとはいえ、賃貸市場で一戸建てが希少なことは一目瞭然だ。そして、この傾向は東京に限らず地方でも変わらない。

 また相談者から、「木造一戸建ての実家を貸すためにはリフォームが必要で、多額の費用がかかるのではないか」と懸念されることも多いが、吉原氏は「基本的にはリフォームなしで、そのまま貸せる」と答えているという。

 不動産会社に相談するとリフォームを勧められるケースが多いが、大半はリフォームビジネス狙いだ。そして多額の費用をかけてリフォームしても、コストに見合ったリターンは得られにくい。賃貸住宅の借り手が最優先する条件は賃料で、次に立地や広さとなり、内装や設備の優先順位は後回しにされがちだからだ。「そのまま貸すからこそ、実家は低リスクで高リターンの資産になる」(吉原氏)。

 それでは、いったいどうすれば空き家になった実家を貸すことができるのか。次ページでは吉原氏に実家を貸すためのノウハウと六つの重要ポイントを指南してもらった。