一般的なイメージとして、何時間も立ち続けるよりは、その間ずっと座っていた方がラクに思えるかもしれません。
ところが、腰痛の原因解明と治療に多大な業績を残したスウェーデンの整形外科医アルフ・ナッケムソン氏によると、腰への負担は立っているときよりも座っているときの方が1.4倍大きく、座ってなおかつ前傾姿勢だと負担は1.85倍にもなるそうです。
そんな大きな負担を長時間にわたってかけ続ければ、体は当然ゆがんでいきます。
もともと人の背骨には生理的弯曲と呼ばれるS字カーブがあり、横から見ると、頸椎では前弯(反る)、胸椎では後弯(丸まる)、腰椎では前弯(反る)という状態になっています。この生理的弯曲は、歩行時の衝撃吸収などに役立っています。
ところが長時間座り続けていると、徐々にこのS字カーブが崩れていきます。崩れ方にもいろいろあって、本来の弯曲が減ってストレートに近くなってしまうこともあれば、弯曲が増強されてS字カーブがきつくなるパターンもあります。
デスクワーカーに多いのは後者で、いわゆる「猫背」と「反り腰」がそれにあたります。
猫背は、背中を丸めて座り続けることで胸椎の後弯が強くなる、つまり背骨の丸まりが強くなった状態です。背骨が丸まり、顎が前に出た姿勢では、頭部の重みを支える肩の負担が増大するため、肩こりや頭痛、背部痛、自立神経への悪影響などが生じます。
1時間に1回は椅子から
立ち上がって伸びをしよう
一方の反り腰は、腰椎の前弯が強くなった状態です。猫背にならないようにと必要以上に背筋を伸ばした座り方を続けていると、反り腰になってしまいます。
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反り腰になると背面の筋肉が緊張し、お腹側の筋肉が緩みやすくなるため、腹圧が弱くなってお腹がポッコリ出てしまいます。また、S字カーブが失われることで衝撃吸収がうまくできなくなり、腰に過剰に負担がかかるので腰痛の要因にもなります。
実際、デスクワーカーの中には自分でも気づかないうちに「巻き肩、ストレートネック、反り腰」の三重苦に陥ってしまっている人が少なくありません。