学校の教師を動員するより
効率的な金融教育の仕組みとは

 こんな形式的な授業を増やすより、もっと人材を効率よく使うべきではないでしょうか。私には具体的な提案があります。

 第一に、銀行員や証券マンを特任教授、特任講師に起用して、家庭科教師を目指す大学生が学べる講座をつくること。特任教授は民間や官庁などの専門家に大学教育をしてもらうための資格で、各大学に独自の資格認定制度がありますが、それほど無理な勉強を課すことはありません。

 第二の提案は、高校でも家庭科の投資の授業だけは、プロ、つまり証券マンや銀行員に来て教えてもらうゲストティーチャー方式を採用すべきだと考えます。そのための簡単な資格テストなども行えば、そうしたビジネスパーソンにとってもいい副業になり、将来大学の先生になる道も開けます。また、教師の免許状を持つサラリーマンに、学校教師になる気持ちをもう一度持ってもらうチャンスを作ることにもなります。教師不足に悩む文部科学省は、こういった制度こそ真剣に検討すべきだと思います。

 実際、教員に対するアンケートで、2022年4月から高校で必修となる「金融教育」の授業導入について、9割以上の人が賛成であるとされたものの、金融教育の授業を担当してほしい先生については、55.9%が「外部の講師」と回答しています(日本トレンドリサーチの調査結果)。ただでさえ、働き方改革やデジタル化が遅れ、給料も残業代も安定しない教師受難の時代に、これは無意味な労働強化というべきだし、効果も少ないと言わざるをえません。

 教師の残業代のことばかりが議論されていますが、教師の「時短」も急を要するテーマです。部活のアウトソーシング論も盛り上がっていますが、これも野球部はリトルリーグに、サッカーはJリーグの下部組織に、水泳はスイミングスクールに、といった体育会系の部活だけに議論が集中しています。しかし、「時短」を目指すなら、体育会系の部活だけでなく文科系の部活もアウトソーシングが必要です。文学創作部、地理部、歴史部、ESSや合唱部などです。これも民間の力で解決でき、しかも民間の高齢者に仕事を増やすきっかけになるアウトソーシングだと思います。