文学なら元編集者や文学賞の受賞者、地理なら地図政策業者や地理好きのサラリーマン、歴史も同じく郷土歴史家などが想定できます。町の英語教室の先生や合唱クラブの指導者なども活用できるでしょう。場合によっては大人たちと一緒に部活をすることも、子どもの成長に寄与するかもしれません。もちろん、高校生と身近に接する部活ですから、ある程度の基礎勉強や人格の判断も必要でしょう。そのために、短い時間で資格をとるための教育を行う学校を指定し、とりわけ性的な前科などを調べた上で任用すれば、もっと安全・簡単にアウトソーシングできるはずです。

 私も大学勤務時代、大学から派遣されて実際の教育実習をいくつも見学しました。若く、工夫をする先生に教えられた学生は指導案も斬新で、実習先の先生たちに「勉強になった」と喜んでもらえるケースもありました。しかし、年老いた研究不足の先生に教えられた指導案のまま実習に臨んだ学生は、授業が終わった後もアナログのノート形式の報告書の作成に追われるなど、無駄な仕事が目立ちました。とにかく学校のデジタル化の遅れは、民間出身者としては驚くばかりです。

 結局、今どきの先生は、上司である古いノウハウしかない教師への報告や書類の作成に追われ、一方で自分より年上のモンスターペアレントの無茶な要望を聞いたり、いなしたりすることに時間の多くをとられてしまいます。実際に希望していた子どもとの触れ合い、子どもの個性にあった理想の教育を施す時間がないまま、疲弊していきます。それならば、老後に4000万円が必要と叫ぶ以上、政府はビジネスパーソンに対して、「老後は学校で副業」というモデルケースを提示するのもひとつの手ではないでしょうか。

現状の戦力で金融教育をやると
「間違い」が起きかねない

 最後に、こんな卒業生の言葉を紹介して終わりたいと思います。

「私は学校では投資については学んでいません。投資については、社会人になってから自分で学びました。生徒に聞かれてもわかりやすく説明するのはまだ難しいと思いますが、それでも今後のことを考えると、投資を勉強しておくことは重要です。日本は貯蓄一本できた社会であることを、社会に出て実感させられました。

 投資の授業を外部の講師に任せる案にも賛成です。生徒にとってもわかりやすく、興味を持つ人が増えそうですし、教員も一緒に受講することで、まだ知識が浅い家庭科教員の学びの場にもなるのではないでしょうか。とにかく、現状の戦力で家庭科教師に投資を教えさせると、間違ったことを教えかねない、あるいは型通りのことしか教えられない……そんな危険を感じます」

(元週刊文春・月刊文芸春秋編集長 木俣正剛)