公務員 970人が明かす危機#12Photo:Grant Faint/gettyimages

行政の劣化は、国民が考えているより深刻なようだ。新型コロナウイルス関連の給付金では自治体間の執行力の格差が浮き彫りになった。他にも、国家戦略に関わる試算などでお粗末な対応が相次いでおり、国益を損ないかねないのが実態だ。特集『公務員970人が明かす“危機”の真相』の#12では、国民が知らないところで進行している「行政危機」の真相に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

TPPを成功させた頭脳集団が
5年で激変していた…

 新型コロナウイルス感染拡大への対応を見て、それまで国民が抱いていた「日本の行政はしっかりしている」という神話は崩壊した。感染者を抑制するために開発したコロナ接触確認アプリ「COCOA」の失敗や、感染者の把握にいまだにファクスを使っているアナログぶりに驚いた読者も少なくなかっただろう。

 コロナ対策の特別定額給付金(1人10万円)の支給においては、申請を受け付けるITシステムの構築に手間取った自治体で給付が大幅に遅れるなど、自治体間の執行力の格差が浮き彫りになった。

 こうした失敗の要因には、お役所の前例主義などがあるが、実は、もっと深刻な問題が横たわっている。それは、公務員の劣化である。国家公務員の志願者は10年で3割減り、人材の離職が急増した。

 人材の劣化は、地方自治体でも深刻化している。地方公務員の採用倍率は年々低下。特に技術系職員の不人気ぶりは危機的で、募集人員を大きく下回ったり、採用が0人になったりする自治体もあるほどだ(詳細は本特集の#17『【都道府県「職員採用倍率」ランキング】採用力「格差」拡大!佐賀が善戦の一方で奈良は苦戦する理由』参照)。

 行政の能力低下の影響は、コロナ対策のような身近な政策の失敗だけにとどまらない。実は、中央省庁では、国家戦略を誤りかねないほど組織の空洞化が進んでいる。

 次ページでは、高度経済成長をけん引した日本の官僚機構の内実を明らかにする。